ハナミガミ 〜拝み屋〜岩本夏大の厄介な日々〜

ケラスス

第1話 プロローグ 〜ナツ〜

 本編には書かなかった短編の話です。

 気に入っていただければ本編も宜しくお願いします。


 △▼△▼△▼


 今日は、特に蒸し暑い夜だ。


 こんな夏の夜には、大抵よくない仕事がやってくるものだ。


 着流し姿で、うちわをパタパタさせながら、僕は懐かしい日々を思い出していた。


 僕の名前は、岩本夏大(いわもとかんた)。

 家族は、カンちゃんと呼ぶが、僕はあまり好きではない。

 まあ、今は苗字の方を読み方を変えて、ガンちゃんと呼ぶ方が多い。

 こっちはなぜか嫌いではない。


 僕は、拝み屋なんていう胡散臭い商売を生業としている。

 僕の家系は、有名な陰陽師の家の分家で、その昔、雪の多いこの田舎に、祖先達は移り住んだ。

 その後はここに神社を建て、一族みんなでやってきた。


 元来、僕には、人に見えない者が見える。

 これについては見えすぎると言ってもいい。



 俗にゆう、幽霊や妖怪の類いだ。

 感のいい者は、その存在を一瞬でも認識することがある。

 大抵は気のせいだと言って、すぐに忘れることだろう。

 もしかすると、君にも覚えがあるかも知れない。


 霊力の強い者は常に認識できるだろう。

 それでも、見えているのはあくまで意思の強い霊や、力の強い者だろう。


 僕の場合はとにかく見えてしまう。

 それが何百年前からそこにいて、なんの意思もすでに持たない者であっても、存在する限りは見えてしまうのだ。


 かと言って、僕には霊力も神とつながるような才能もない。


 あくまで目がいいだけだ。

 まだ、自分の身も守れない幼少の僕を哀れんで、家族が特別なメガネをくれた。


 初めて見たときは驚いたよ。

 生まれて初めて見る、人と同じ景色。

 当たり前のはずの景色、それがなんとも愛おしく感じた。


 それでもだ。

 やはり、持って生まれたこの目には全てを見えなくするということはできない。


 あくまで弱い存在に、フィルターをかけているだけなのだから。


 特に僕の周りには、いつも怪奇や不思議といった類の事案がいつも迷い込んでくるのだ。


 それらは僕を求めるかのように、いつも厄介な事になってから現れる。


 そんな僕の【】の話をしよう。


 ただし。

 こころしたまえ。


 大抵の厄介ごとは、人が触れてもいいことはない。


 そしてそれは、【】に満ちている。

 人がなぜ狂気に走るかはそれぞれだ。


 しかし、狂気に触れてしまい、狂気に走る人間もいるのだ。


 忘れてはいけない。

 今自分がいる【】がいかに素晴らしいかを、常に忘れないことだ。


 ごとはあくまでなのだから。


 ガンガンガンガン!!

「がんちゃん!助けてくれ!!」


 僕の感はあたったようだ。

 こんな夜中に僕を訪ねてくるということは、また厄介な話だろう。


 話はまた次回からとしよう。


 今夜はゆっくり眠るといいだろう


 君はまだ、日常にいるのだから。

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