2.5

 じゃあ後よろしく。


 どうよろしくかは知らないが、蔵指さんはそういって帰っていった。

 長い髪が、ふわりと浮かんで落ちていく。綺麗だ。


「……なかなか、あれだね」

 蔵指さんが入ってきた瞬間にバッグに隠れたヴェリテが出てきて言う。


「うん、あれね、あれ」

「そうだね、あれ、だね……」

 どうやら、今回の幽霊に関しては全員同じ気持ちらしい。


『「変な人」』


 声がそろった。声がそろったはいいが、ここからどうするかが問題だ。

 千草が眉を少ししかめながら言葉を発する。


「どうする? 最初っから結構ハードな目標にぶち当たったけれど。超ハード。絶賛中二病系患者の幽霊、ね。どうやって天に還す? 御還し申し上げる?」


「その台詞も結構危ういけどね。……やっぱり、手荒な真似はしたくない。仮にも、僕らの先輩なんだし。まずは、下調べかな。それから、一芝居打つ」


「おぉ、蒼が詐欺師化。さーぎーしーだーっ」


「人聞きの悪いこというなよ。千草もやるんだから。とにかく、明日から本格始動だ。白藍さくら、あと文芸部のことも徹底的に洗う。……この仮定が間違っていたら、失礼だし」


 よし、決まった! 気分は犯人に気がついた探偵だ。

 かっこよく言い切った僕に、千草が水を差すように首を大きくひねった。


「仮定? 仮定? 失礼? ……誰に?」


 コケた。

「っておい! さっき声がそろったからてっきり分かってるもんだと理解していたけれど、ひょっとして、分かってない、のか……?」


 おそるおそる尋ねてみる。

 いや普通、さっきの会話聞いていたらなんとなくでも察するだろう!


「何が? 何が?」

 クエスチョンマークをたくさん浮かべる幼馴染に、僕は頭を抱えるしかなかった。

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