学園、青春、ミステリ、と精密な完成度

 このテの作品における、手堅い展開はきちんと踏まえてある、キャラクター性に富んだ、ライトなミステリと言ってしまえばそれで済むので、些かレビューの文字数も少なくなってしまいそうなのだが。

 ただこのキャラクター性に言及するならば、私に言わせればピーキーで。学園という箱庭、事件という特定性の中で活きる個性として描かれており。
 故に。
 主人公のような人間関係、現実社会への諦念や、他の人物たちの、救いを求める自己犠牲や、過去を埋め合わせたい少女への憧憬、何かが足りない欠けた自分の異質を自覚する不安や恐れなど。
 青春=思春期とも重ね合わせた、鋭利で繊細なキャラクター小説として光る。

 ヒロインのエキセントリックな登場に比べると、事件の渦中ではあるが主人公との微笑ましいやりとりに終始した今作は、若干肩すかしを食らった感はある。
 その姉も存在を匂わせる程度であったり。会長含め、生徒会も全容を掴めなかったり。続きがあるのだろうか、という予感はあるが。やや消化不良ではあるか。

 この点、実にカクヨムというかカドカワらしい優れたキャラクター小説として、私なんか好感が持てたのだが、コンテスト元の創元社としてどう評価が付くのか興味深い作品でもある。