絶望のサバイバル(4)


   22


 どこまでも青かった。

 空はどう見てもどこから見ても澄んだ青だった。

 ここは灰色、あそこは青色。

 玉虫色のボクの心は、あの空を見れば虹色に変われるのかなぁ。

 それはボクにも分からないよ。

 答えはあの空だけが知っているのさ。

 ――――。


「ねぇ響。何やってんの?」

「ひ、きゃうっ!?」

 親友の氷室ひむろあおいに後ろから声を掛けられた長谷川はせがわゆらは、小動物のような叫び声をあげてバッと後ろを見た。

 どうやら民家跡に落ちていた紙に、何かしらの文字を書いているようだったのだが。

「こ、これは……べっ別に何でもないよ!」

「えー?何でもない筈ないでしょお? ちょっと見せてよー、響ぁ~♪」

「いやっ……やめてよっ! 恥ずかしいよぉぉ!」

「見~せ~な~っ~てぇ~」

「ああ~っ!」

 長谷川が、恥ずかしがって紙を隠し、氷室が、長谷川が紙に書いたそれを見ようと紙をキャッチしようとする。そんなやり取りを繰り返していた二人だった。

 氷室は長谷川が何かを書いていた紙を無理矢理奪い取った。

「『どこまでも青かった』『空はどう見てもどこから見ても澄んだ青だった』『ここは灰色、あそこは青色』『玉虫色のボクの心は、あの空を見れば……って、これポエムじゃん!

 それにしてもこのポエム、結構いい文章だねっ」

「ひどーい! だから見せたくなかったのにぃ~!」

 その後長谷川は泣き出してしまった。氷室は笑いながら長谷川を慰めていた。

 そんななか、氷室は思った。

『こんなやり取りが、ずっと続けばいいのにな』 と―― 。

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