第13話「再クエスト」
あの後、俺達はとりあえずマリアの実力を見るためにパーティーを組んで前と同じジャイアント・トードの討伐クエストへ出ることにした。
「それにしてもいくら神託が届いたからって会えもしない女神のために金を集めてどうするんだよ?」
道中暇なので俺はマリアに暇つぶしの質問をした。
「そんなの知らないわよ。でも、アクア様からの神託が来たんだから無視するわけにいかないじゃない! きっと、これはアクア様から私への『お金を集めなさい』って意味なのよ!
だから、私はいつアクア様が目の前に現れてお金を必要としていたら直ぐに大金をお渡しできるようにお金を集めなきゃいけないの! それに、私だってお金は大好きだから集めるのは苦じゃないしね~♪」
「仮にも一端のプリーストが『お金が大好き』とか言っていいんですか?」
るりりんのその疑問にもマリアはむしろ誇るように答えた。
「もちろん大丈夫よ! むしろ、アクシズ教徒には『無理は体に毒って言うくらいなんだから無理はしちゃダメなのよ!』って教えがあるくらいなのよ! だから、無理をせず本能のおもむくままに生きている私は立派なアクシズ教のプリーストなのよ!」
「いや、プリーストが本能のおもむくままに行動しちゃダメだろう」
「問題ないわ! 『汝、何かの事で悩むなら、今を楽しくいきなさい。楽な方へと流されなさい。自分を抑えず、本能のおもむくままに進みなさい』って教えもアクシズ教にはあるんだからね!」
とんでもねぇ教えだなアクシズ教って……
「なんならこれを機会に貴方達もアクシズ教の教えを受けたらどうかしら?」
俺とるりりんはそう言って渡されたアクシズ教団入信書をビリビリに破り捨てた。
「ああ! なんてことするのよ! アクシズ教は本当に素晴らしい教えなんだからね! 貴方達だって教団に伝わるアクア様の話を聞けばその良さに囚われるんだから! アクシズ教に入れば引き返せないくらい人生が変わる事間違いなしなんだからね!」
囚われるのか……引き返せないのか……やっぱり、あのアクアとか言う女神関連にはかかわらない方が良さそうだな。
マリアもクエストの結果次第では早々に見切りを付けた方がいいかもしれない。
と、思っていたのだが……
「リフレクターッ!」
「ゲッコォオ!」
マリアがスキル「リフレクター」を発動させると俺達に飛び掛ってきたジャイアント・トードは突如現れた分厚いガラスのように透明な壁に激突し仰向けに倒れた。
「るりりん、今だ!」
「はい! 任せてください。縁を語る風よ……永久を約束する光よ……そして、罰を飲み込む夜よ! 今ここに我が力を示さん!
プロージョン!」
るりりんが魔法を唱えると目の前のジャイアント・トードに向かって炸裂魔法が発動し、これで三体目のジャイアント・トードの討伐に成功した。
「マサヤ! 後方からも別のジャイアント・トードが来てる!」
「分かった! るりりんは炸裂魔法の準備を、マリアはるりりんをリフレクターで守ってくれ! 詠唱の時間は俺が稼ぐ!」
俺が指示を出すと、るりりんは直ぐに詠唱を始め、マリアはるりりんを守るようにリフレクターを展開した。
「おっぉおおおおお! おらっ!」
「ゲコォオ!」
そして、俺はるりりんが詠唱する時間を稼ぐ為に囮となって近づいてくるジャイアント・トードに突撃し今日買ったばかりの安い片手剣でジャイアント・トードをボコスカと殴っていく。
正直言ってマリアはプリーストとしてかなり優秀だった。
まぁ、曲がりなりにもアークプリーストなだけはあってその能力に問題はない。
防御面に関してはマリアのスキル「リフレクター」によって鉄壁の守りが出来るし、回復魔法の「ヒール」もできる。さらに後方から支援魔法で俺を強化することで、俺一人でも十分にジャイアント・トード一体と渡り合えるのだ。
「マサヤ! 準備が出来ました! これでいつでもまた炸裂魔法が撃てます!」
「よし、じゃあ合図が来たら思いっきり打ち込んでくれ! マリアはカバーよろしくな!」
「了解です!」
「了解よ!」
さっさと片付けたい俺は支援魔法で強化された身体スピードを生かして二体のジャイアント・トードを引き付けた。
「いくぜ! フラッ――シュ!」
ギリギリまで二体のジャイアント・トードを引き付けた所で俺はフラッシュでジャイアント・トードの視界を奪いるりりん達に合図を送った。
「今だ。やれ!」
「リフレクター」
「プロージョン!」
すると、次の瞬間俺の目の前にマリアのリフレクターが展開され、二体のジャイアント・トードの頭上で強烈な炸裂魔法が発動した。
「「ゲコゴォオオオオオオオオオオオ!」」
炸裂魔法によりジャイアント・トードは黒コゲになり、俺への爆風はマリアのリフレクターのおかげで何のダメージも受けていない。
「ふぅ、これで五体討伐成功か……意外と早く終わったな」
マリアも性格からしてパーティーとして大丈夫かと思ったが試してみれば意外と上手く連携できたのではないか?
すると、マリアが偉そうに腕を組んで自分の成果を主張し始めた。
「ふっふふ! どうよ! 見た? これが私の力よ! この完璧なアークプリーストである私が優秀なおかげでこんなクエストも簡単に終わっちゃうの! 分かったらこのクエストの分け前の8割は私によこしてもいいんじゃないかしら?」
「な、何を言っているのですかマリア! そんなことを言ったら仕留めたのは全て私の炸裂魔法ではないですか! ならば、分け前はこの私が一番多くするできです!」
はぁ……まったく、マリアはこの金に一途な性格さえ無ければいいんだがなぁ。
「おい待て! そんなこと言ったらパーティーの指揮をとっていた俺が一番働いているだろうが! だから、取りは俺が9割に決まってるだろ!」
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