研究部の真実 5

「蓬莱先生について知っていることはない。学年も教科も違ったんだ。それ以上の関係はない」

 檜室先生はきっぱりと言った。

「その時の様子でもいいんです。小さいことでもいい――」

「だから何も知らんと言っているだろう。そんなことをしている暇があるなら勉強なり部活なりに打ち込めばいい」

 檜室先生は鼻息を荒くする。高瀬先輩は見かねたようで俺たちの間に割って入った。

「では話を変えます。実は研究部の冊子が1冊なくなっていました。これは蓬莱先生が作成したものです。何か心当たりはありませんか?」

「知らん。それにそれはお前らの不注意なんじゃないか? まず人を疑う前にものの管理をきちんとしろ」

「いつも鍵はかけてあります」

「そうやって反論ばかりするな。

 そういえば蓬莱先生も学校の方針には何かと突っかかってきたがな」

 そうなのか? 檜室先生の言う通りなら、父さんは学校の方針が気に入らなかったことになる。

「その時の久葉中って、どういう方針だったんですか?」

「文武両道だ。だが今は高瀬に話している。蓬莱は黙っていなさい」

 檜室先生にぴしゃりと言われ、俺は腹が立った。高瀬先輩が腕で牽制しているので何か言おうにも言えない。

「とにかくな、部活動でのものの管理はしっかりしろ」

 そういわれて、高瀬先輩は「はい」と答えた。しかし、「では」と話を続けた。

「蓬莱先生から預かったものはありますか?」

「だからないと言っているだろう! 知らないものは知らない! とっとと帰れ!」

 職員室のど真ん中で怒鳴られてしまえば退散するしかない。社交辞令程度に「失礼しました」と言った。

「すまない、元気君。話を聞こうとしてかえって機会を奪ってしまった」

 職員室を出た後、高瀬先輩から出たのは謝罪の言葉だった。

「仕方ないです。俺も、正直怒りが抑えられていたかどうか……」

 あんな言い方をされても高瀬先輩は平静を保っていられる。いいことなのかは分からないが、俺にはできそうになかった。

 しかし、普段穏やかな父さんが突っかかったというのには、もう少し話を聞きたかった。教育方針として文武両道はむしろ望ましい姿だろう。なのに、その方針には不満があったということなのか?

「次は、どうしようか」

「佐川先生と川崎先生ですね。川崎先生はよく1年生の教室のあたりを見回っています」

「じゃあ、先に佐川先生のところに行こうか。佐川先生は図書室の司書をしているから、図書室にいるはず」

「そうだったんですか」

 意外と近くにいたものだ。普段図書室など行かないから知らなかった。俺たちは3階の図書室に行った。

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