第2話

 さてさてさ〜て〜?ここは何処でしょうか。お肉の匂いがプンプンしますな。

 私はどこから落ちてきたのか、シューちゃんの上に勢いよく落ちると、そのまま考え込むように腕を組んでいた。

 辺りは一面肉っ!!…というわけでもなく、一見普通なゲームでよく見かける城下町のような風景が広がっていた。

しかし、どこの店も並んでいる商品は鶏肉である。


「お、おい…。考え込むまえにまず私の上から退いてくれないか…」


 すると、下の方から苦しそうなシューちゃんの声が聞こえてきた。


「おっと失礼!いやー、あんまりに衝撃的だったもんでさー。本当に異世界だとかそういうのってあったんだね〜。ここって何ていうところ?

 剣とか魔法とかあるのかな!?もしかして未知なるお肉が…」


「いいから退いてくれぇっ!!」


 シューちゃんは、なかなか退かない私を上から落とすようにクルリと回ると、息を荒くしながら私をじっと睨んできた。

 そこまで重かったかなぁ…、でもそんなに太ってないけどなぁ。

 私のは自分のお腹を確かめるようにポンポンと叩くと、ちゃんとくびれがあるか腕をスライドさせて確認した。うん、よかったちゃんとある。


「で、ここってどんなとこなの?」


「ここはチキン王国。そしてこの世界はミートワールドと言われるところだ。

 ここは肉力…その力が強いものほど強大な力を手にすることができる。そして、その助っ人として、王様…チキン帝が貴方を直々に選んだのだ」

 

 シューちゃんの話を聞き、何となくわかったようなわかってないような気分になりながら私は頷いた。まあ、要するに肉好きの私に敵はいないということだろう。

 そして、ここは私にとっての天国肉の楽園だってこともよぉくわかった。

 だけど…


「私って具体的に何すればいいの?」


 うん、ここに来たのはいいけど、何をすればいいのか…、それが全くわからない。

私がそう尋ねると、シューちゃんはうん…と考え込んだ。


「とりあえず言っておくが、今この世界では鶏肉派と牛肉派、豚肉派の3大勢力が争っていてな。まあ、他にも勢力はあるのだが…、とりあえずはこの3大勢力だけでいい。

 それで、貴方がこの鶏肉派、チキン王国の救世主として選ばれたんだ。だから、私たちと一緒に戦ってくれればそれでいい」


「えぇっ!?たっ、戦うって!?殺しあうの!?」


 私はシューちゃんの話を聞き驚きを隠せず、「それは無理無理!!」と手のひらをかおのまえでブンブンと大きく振った。

 だって、私平成生まれだし、戦争とか体験したことないし、いやそんな体験したくないよ!!

 するとシューちゃんは心配するなとでも言うように首を横に振った。


「それは心配しなくていい。争っているといっても殺し合いだとかそんなものは存在しない。この世界にはな。

 戦いに負けた者は、全員その負けたところの肉派に取り込まれるんだ。例えば…そうだな。牛肉派が豚肉派に戦いで負けたとすると、その牛肉派は豚肉派に変わってしまう。

そして、なぜか肉派が変わる時に出現する肉を、私たちたちは食べ、生きているのだ」


「え、何それ。殺した人の肉食べてるってこと?」


「いや、そうではない。肉は肉派が変わる時にその者の精神から出現するんだ。自分の脳内が〜派から〜派に変わるからかな。…まあ、細かい理由は証明されてないんだがな。おそらくこの世界の仕組みだろう」


「うわ〜、難し…。何言ってんのか全然わかんない。要するに敵を倒したらその敵から肉がポンってでてきてそのひとはこっちの味方に〜ってなるってこと?」


 シューちゃんの無駄に難しい解説を何とか頭の中で整理すると、私はそうシューちゃんに返した。


「まあ、そういうことだな」


 シューちゃんはこくりと頷く。


「じゃあさ、魔法とかあるの?」


 そんなシューちゃんに私はもう1つの疑問をぶつけた。魔法とかがあるのなら私も使ってみたいんだよね〜。楽しそうだし


「魔法…か。できなくはないな。肉力を消費すればできないこともない。よく豚肉派が使っているしな」


「あ、それそれその肉力って何なの?」


 またまたの私の質問にシューちゃんは何の悩む素振りも見せずに口を開く。


「肉を食べることで補給される…そっちでいうとこの魔力だな。肉力の質は生まれつき違っているが、質のいい肉を食べることで肉力も高くなると聞いたこともある」


「へぇ〜」


 私は感心したように返事をすると、その場から立ち上がり、うんと背伸びをした。

 とりあえず私がここに来た理由とかはわかったし…、まあ、まず行かないといけないのはあそこだよね〜。

 よかったら鶏肉たらふく食べさせてもらお〜っと。


「はぁ…貴方の考えてることは、ここの世界に来たからもう覗けないが…だいたいわかる。

 まあいいんだが、とりあえず行こうか。王様のところへ」


 そんな1人でブツブツ呟いているシューちゃんの身体に私は思い切り飛びついた。


「よぉーし、行け〜!シューちゃん号!!」


「そんな子供のようなことするか!」


 私とシューちゃんの2人は、街の真ん中に佇む大きなお城に向かって歩き出した…。

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