第27話 空港がありました

 竜王の里には何だかんだで二週間も滞在していた。ここでの収穫は手っ取り早い帰還方法が分かったのと、よく分からなかった神力を感じることが出来るようになったことである。


 しかし、これだけではなかった。神力を感じることが出来るようになった翌日、ステータスを確認したところ神格が第六級神相当になっていた。


 因みに、第六級神の権限を確認すると、


 第六級神:神の階級で上から六番目の位。権限として、自身のステータス設定各五万まで、全魔法中級までの無詠唱使用、全習熟能力中級、自分より下位の存在のステータス確認、既知の固有能力(但し、一部例外有り)


 とのことである。


 全魔法とか全習熟能力とか言われてもいまいちピンと来ないが、メニューで確認したところ見るのも嫌になるくらいあった。魔法は一ページに二十個位表示されるのだが、ページ数が一万を超えていた。


 習熟能力はパッと見では確認できないのだが、神力のところから調べてみたところ、千を超える能力が表示された為、いちいちそれ以上の正確な数を確認する気も起きなかった。まあ、特殊能力がインフレだが使うのは一部だけだろう。


 こんなこともあり、特訓が終わった後も使う能力の選別や使いこなす練習などしていたら、あっという間に二週間が過ぎていた。




――――――




 さて、今俺は馬車に揺られて外をボーっと眺めている。


 この馬車は王都から東へ向かっている。東方大陸に行くためには、中央大陸の最東端の港町から出る飛空挺に乗る必要がある。初めは飛竜に乗って東方大陸まで行こうと思ったのだが、それは飛竜とお下げ髪に止められた。


 飛竜は俺に手も足もでなかったのが悔しかったのか、竜の里で鍛え直すみたいだ。で、お下げ髪曰く、東方大陸には特殊結界が張られており、然るべき手段で入国しないと防衛システムに排除されるらしい。


 それがどれ程凄いのかはわからないが、態々問題を起こす真似はしないに越したことはない。


 まあ、そんなわけで王都から馬車に乗って東へ向かうことにした。因みに王都へは転移で一瞬である。


「平和だなぁ」


「そうですねぇ」


 言わずもがな、ストーカーもといお下げ髪も一緒である。


「こういう時って盗賊とか魔物の群れとかに襲われるのが普通じゃん」


「何処の普通ですか! こんな見晴らしのいい場所なら、盗賊は来ませんし、魔物の類いもいれば直ぐわかりますから、対処も難しくありませんよ」


 お下げ髪は疲れたようにそう言って馬車の壁にもたれ掛った。




――――――




 斯くして、本当に何事もなく複数の街を経由して目的の町へとたどり着いた。


 しかし、ここに来るまでの間、王都から離れれば離れるほど町に活気が溢れていたのが気になっていたが、ここに来てその理由が分かった。


 まあ、何てことは無い。この港町に近づくにつれて活気があったというだけだ。その理由はこの町を見ればわかる。


 空港都市ゲートウェイ


 中央大陸の最北端に位置し、東方大陸への唯一の接続場所。空港都市と言うだけあり、空港があり、そこで飛行機に乗り東方大陸へ向かうことが出来る。また、東方大陸からの輸出品もこの町で売買されるため、多くの商人が取引をするために集まる。


 町並みは入り口辺りは石造の中世風の建物がチラホラ見受けられ、露天商も多く見られる。しかし、街の海岸部、つまり空港方面に近づくにつれて近代的になり、果てはコンクリート造なのか普通にビルまで存在していた。空港なんか完全にそうであり、滑走路や管制塔等の普通に羽田空港で見た様なものがあった。


 うん、完全に文明がオカシイ。中央大陸の中世ヨーロッパ風の概念を木端微塵にするだけ物がここにはある。


 というか、普通に水道とか水洗トイレとか、エレベーターとかあるし、もうファンタジーじゃない。


「ほえー、すごいですねぇ。流石東方大陸への入り口と言うだけはありますね」


 お下げ髪がキョロキョロ辺り歩見回しながらそう言った。


「あんまりキョロキョロするな。お上りさんだと思われるぞ」


「しょうがないじゃないですか! こんなのここ以外じゃ見られないんですから!」


 まあ、それはそうだろう。中央大陸は本当に文明が遅れているからな。竜の里も中央大陸よりは進んでいたが、ここまででは無かった。


「というか、何でここまで発展していて、王都があんな何だ?」


 ここまでの技術があるなら、他の都市ももっと発達していてもいい気がする。寧ろ、ここまで技術格差が生まれる意味が分からない。見た感じだと技術を秘匿にしようとする感じが見られないため、疑問に感じた。


「それはですね、東方大陸の“カガク”が関係しているんです」


「科学が?」


「そうです。ショウさんは異世界人なので理解できるでしょうが、この世界の住人ではほとんどの人が“カガク”を理解できなかったんです。今の東方大陸のトップであるタケル様はその技術を広めようと奔走していたそうです。

 初めのうちはまだ良かったそうで、汲み上げ式ポンプや水車等は理解できたらしいのですが、“デンキ”や“ガソリン”といったようなものが出てきた辺りから理解できない人が続出して、最終的に理解できた人は殆ど居なかったようです。

 それで、東方大陸の手の届くこの都市は中央大陸の他の都市と比べ、かなり発展しているのです。ただ、これでも東方大陸とは天と地ほどの差があると言われていますが……」


「なるほどね」


 と、雑談しているうちに空港に辿り着いた。東方大陸へは飛行機に乗っていくわけだが、その為には手続きが必要であるとのことで、空港へ向かっていた。


 空港は四階建てで、一階はロビーで航空券の発行やチェック等をしており、二階は入国審査の場所で、三階は入国審査、四階は飛行機出発の待合場所となっている。


 中にはかなりの人がいて、受付も長蛇の列が出来ていた。最後尾と思われる場所には三時間待ちと書いてある札を持った係員が立っていた。係員と分かったのはこの世界では珍しい、普通の黒いスーツを着ていたからである。


「受付の最後尾はここでいいですか?」


 そんな係員に声を掛けると、笑顔でそうですよと列へと促された。しっかりと社員教育がなされているのか、それとも地なのかは分からないが、愛想のいい人だ。


 それはともかく、三時間もやることが無いので、ひたすら多い魔法や能力を見ていることにした。横でお下げ髪が何か言っていたが、あーとか、んーとか返していたら、もういいですと言って辺りを観察するように見始めた。


 そんなこんなでどれくらい時間が経っただろうか。列の長さは今だ衰えることを知らないが、俺達の番は着々と近づいて来ており、あと十人位となっていた。


 もうすぐ番が来るなぁとぼんやりしていると、後ろの方から怒鳴り声が聞こえてきた。


「何で儂がそんなに待たなくてはいけないのだ! 儂を誰だと思っている! 儂はヴィットーリオ=グラ=ビスマルク=グランアイゼン、グランアイゼン王国の伯爵であるぞ!」


「ですが、決まりですので。それにここではいかなる身分も関係なく、全ての民が平等であると申してあるはずですが?」


「貴様、儂に口答えするか! ん? よく見れば中々の上玉ではないか? 儂の順番を先にしてお前が儂の物になるというなら今回のことを不問としようではないか、ん?」


 さっきの札を持った係員さんが太った伯爵に絡まれている。係員さんは顔色一つ変えず笑顔で対応していた。恐るべし社員教育。


 じゃなくて、あの人を助けたいがこの町では暴力行為はご法度である。基本的にこの町は日本と同じ法律と考えていい。恐らくタケル様とやらがそういうふうにしたのだろう。知識チート恐るべし。


 そうこうしているうちに係員さんの腕を太った人が掴んでいた。これは助けるべきかと思ったところで、アラーム音が聞こえた。


「警告! 警告! 今すぐ暴力行為は辞め、速やかに投降してください!」


 何かと思っていると、いつの間にかあの二人の周りに四体のロボットがいた。


……ロボット?

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