ただひとつの異世界譚

サトー

第一部

プロローグ

 俺は勇者でも英雄でもない、ただ運が良かったか悪かったかのどちらかなだけだ。



 俺個人の価値観によるものだが、普通に生まれて、普通に育って、普通に学校に通って、普通に家から近い会社に就職した。


 片親だったが、それは俺にとっては普通のことだったから、割愛してもいいだろう。


 たいていの人は多かれ少なかれあるだろうと思う会社でのストレスを趣味のゲームやネット小説を読んで発散する、インドアな一般人…それが俺だ。


 読んでいる分には面白かったし、勇者や英雄に憧れる気持ちも、まあ多少はあった。でもそれは、単なる憧れだ。


 俺にそんな器量はない、少なくとも俺はそう思っている。


 実際、四捨五入すれば40歳になる独り身の男にそんなものあるわけないだろう。


 ただ実際こうやって起こるとは思ってもいなかった召喚をされると、まあ、いろいろ思うところはあるわけだ。不安だったり、期待だったり、といろいろな。


 召喚されたのが俺一人じゃなく100人という数で、召喚基準が資質があることか少しでも自ら望んでいることのどちらかを満たしていることで、みんなそれぞれが地球にいたころと違う姿になっていたとしても、だ。



 これは…召喚された100人のうちの1人…勇者でも英雄でもない俺が語る物語だ。


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