第4話『バハーム砦』


 盗賊達を斬り捨てた後、男は村民達が用意した物置小屋で一眠りすると、早朝には村を離れ、バハーム砦を目指し出発した。

 彼が村に滞在したのは短い時間であったが、その間に村人達の間で小さないざこざが起こった。盗賊達の怒りを恐れた彼らが男の身を引き渡そう考えたのだ。

 しかし、村を訪れた盗賊をあっという間に倒してしまう男を力付くでどうこうできるわけもない。

 結局村人に残された選択は、バハーム砦に巣食うという盗賊達がこの男によって退治されるよう願う事であり、その手助けとして砦までの道を教える事だった。

――あれか。

 盗賊の言葉通り、村から半日ほどの距離、深い森を進んだ先にその砦はあった。

 石造りの壁には苔が生え、ところどころは崩れてさえいる。だがその巨大な建造物は紛れもなく、敵を寄せ付けんとする存在であり、また味方を守らんとする盾であった。

 男の目の前に解放戦争の遺物、バハーム砦がその姿を現したのである。

――陽が沈みきるまで待つか。

 村を出てから半日ほどだが陽は傾きながらも沈んではいない。明るいうちに仕掛けるのは得策と言えず、夜の訪れを彼は待つ事にした。

 それまでの間、外から気付かれぬように砦の様子をうかがう男。

 しかし、盗賊達の出入りがいくらかあるだけで、これといった収穫は得られない。

――やはり砦の内に入らないと話にならないな。

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