木枯らしに舞う落ち葉

 街路樹の葉が色褪せて地面へとはらりと落ちていくのを今年も見ている。

 そろそろ吹く風もじんわりと肌を冷やすような温度になってきた。

 落ち積もった葉っぱを集め積み上げて、サツマイモを焼いた記憶が昨日のように思い出される。

 今はもうそんな事をやる人たちも少なくなった。

 そもそもちょっとした煙が出ただけでもすわ火事か!?と騒がれる時代。

 とはいえ、田舎の方ではまだまだのんきな農家のおじいちゃんが稲を刈った後の田んぼで野焼きをしているのだから、忙しないのかのんびりしているのかよくわからない。

 一応野焼きは消防署だかどこかに申請すれば出来るらしいけども、詳しい事はわからない。


 秋も深まると時々思い出すのは、自分の幼い頃、保育園に通っていた時の事だ。

 イチョウの大木が植えてあり、その木が雌だったものだから秋になると銀杏の実をつけるのだ。

 今となっては銀杏が食べられる事は知っているのだが、当時はただ臭い迷惑な実をつける木と憎しみを持って実を遠ざけていた。

 そんな子供も、今となっては銀杏の実をレンジでチンしてビールで流し込むような酔っ払いに成長しましたがね。

 

 ビールの二本目を流し込みながら、銀杏を口に放り込み窓の外を眺める。

 夏の頃はよく見えなかった星々が、ようやく鮮明に見えるようになってきている。

 月もよく夜空に映えるが、やっぱり煌めく星々こそが美しいと思っている。

 そろそろ空を見上げながら白い息を吐いて散歩をするのが楽しい時期になるだろう。

 その時には片手に缶コーヒーを添えて、寒さにかじかんだ手を温めながら歩くのが良い。

 寒いからこそ暖かい物の有難みが身に沁みる。

 そのじんわりとした熱がたまらない。


 ふと気づけば、窓には水滴がつき始めた。

 同時にさらさらぱらぱらと降って来る音が聞こえてくる。

 水滴だけかと思えば、よく見れば雪の融けかけた結晶も混じっていた。

 霙雨だ。

 今年は暖かいからか、初雪のなりそこないになってしまったのか。

 

 冬の足音は訪れるようで、まだどこかで踏みとどまっている。 

 

 

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