幕間 本の化身、緑青は独考する

 さて、私と姉さん以外の『本』の気配を辿ってきたけれど、ここ——かしら。


 ——うーん、ただ少し納得できないというか、通常ではありえないというか……。今私が把握できるだけで、私を含めてこの街に五冊も『本』の気配があるってどういうことなんですかね。


 ここまで『本』が増えた理由は、おそらく志田さんなんでしょうが、それにしたってこれは大盤振る舞いが過ぎるような気もしますけど。鴉羽は大喜びなんでしょうけれど、志田さんの失った人生の部品について考えると……そう喜んでもいられませんね。


 ただこの場所から感じる『本』の気配は少し妙ではありますね。弱々しいというよりは、少し感じ辛いというか——なんでしょう、違和感があるというか、なんというか。


 ただ、なんにせよ『本』同士なら、持ち主がどんなに狂っていようと何とかなるでしょうし、とりあえず話だけでも聞いてみますか。


 ん——あの女性、かな? でも、周りに『本』らしき人は見えませんね。

 とりあえず、声だけでもかけてみますか。

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