第11話(後編)

 翌朝。

 私たちは、東京湾に臨んだ品川のホテル会場へと向かった。

 慣れない土地での電車移動は骨が折れるだろうと、朔哉さんが車を出すことを買って出てくれた。申し訳ないと思いつつも、彼の真心に親子で甘えることに。

 この時期には珍しく、清々しい朝だった。突き抜けるような青天に恵まれ、気温もそれほど低くはない。

 持参してきたダークブラウンのパンタロンスーツに身を包み、会場入りする母の背中を、今しがたふたりで見送ってきたばかりだ。

 シンポジウムは、午前10時から午後3時まで。そのあいだ、私は彼のマンションで待機させてもらうことにした。……といっても、いつものように憩うというわけにはいかない。

 そう。私が現在立たされているのは、死線デッド・ライン。明日も試験が容赦なく待ち構えている。ゆえに、教科書をはじめとする、ひととおりの『お勉強グッズ』は揃えてきた。

「じゃあ、試験勉強に励めよ、大学生」

「うー……」

 リビングに入るやいなや、念を押されてしまった。しょぼくれながら、とてとてとガラステーブルへ。そして、なだれるように絨毯へと座り込み、教科書やレジュメ、ノートをテーブルの上におっぴろげた。

「前々から言おうと思ってたんだが……」

「?」

「そんな丸まってやんなくても、俺の書斎使っていいぞ。机も椅子もあるし、そっちのほうがいいんじゃね?」

 不本意ながらも臨戦態勢に入った私に、彼がこんな提案をしてくれた。

 たしかにこの姿勢はよくない。自覚はある。背筋は曲がってるし、体の軸もずれてるし。でも、私にとっては、勉強(とりわけ精神的負荷の大きい試験勉強)に専念したいときに、うってつけの姿勢なのだ。

「私、学校以外で机と椅子に座って勉強できない子なんですよ。かしこまっちゃうと、逆に集中できないんですよね」

「なんだそれ。……まあ、お前がいいならいいけど」

 理由を述べると、クックッと笑われてしまった。

 実家でも、机と椅子をまともに使用して勉強したことは数えるほどしかない。母が料理をしている横の食卓とか、リビングのソファに寝転んで、とか。

 しかも、無音の中よりも、少々音のするほうが、かえってはかどったりする。

 寂しいのかな? 安心したいのかも。だけど、ひとりでいるのはわりと好き。特別人と慣れ合いたいわけじゃない。

 ……彼とは、一緒にいたいと思う。

 甘えてるだけだな。単なるわがままだ。

 そんな自分に辟易しながら、教科書の該当ページをめくる。すでに全体を確認してあるが、再度蛍光マーカーでチェックした箇所を目で拾っていった。

「昼飯できたら声かけるから、とりあえずそれまで頑張れな」

「はーい」

 私がせっせと勉強をしているあいだ、彼は軽く部屋の掃除をしたり、観葉植物に水をやったりと、家事に勤しんでいた。

 テキパキしている。動きに無駄がない。

 ……主夫だ。

 そういえば、彼の顎には今日も髭がない。しかも、ただいま髪までおろしているという特典付き。色気は通常の3倍だ。

 だめだ。なんかもう眩し過ぎる。

 どことなくフワフワとした私だったが、このままではいけないと邪念を振り払い、気持ちを刷新してリスタートを切った。

 時刻は、11時前だった。




 不意に鼻先まで漂ってきた美味しそうな匂い。これにより、私の集中はプツリと途切れてしまった。

 何作ってくれてるのかな? ハーブの匂いがする。セージ、ローズマリー……タイムもあるかも?

 思考がそちらへと奪われる。いつぞやのバラードソングみたいだ、なんて思いながら、彼が呼んでくれるのを待った。

 もはや勉強どころではない。それまではなんともなかったのに、ここへ来て急に空腹感に襲われた。

 それから十数分後。

「できたぞー」

 彼に呼ばれた。ついにできあがったようだ。

 待ってましたとばかりに意気揚々と返事をし、ペンを置いてダイニングへと急ぐ。

「おぉっ!」

 テーブルの上に並んだ料理を映した両のまなこが、燦然さんぜんと輝いた。

 色とりどりの海藻サラダに、数種のきのこが入ったスープ。メインディッシュはハーブチキンだ。

 彼は、どうしてこうも、私の胃袋を鷲掴みにするようなチョイスをしてくるんだろう。

 味が申し分ないことは、口にする前からわかっている。彼の料理は、まず視覚に対してアピールするところから始まるのだ。このアーティスティックな盛りつけが美味であることを主張しまくっている。

「勉強、はかどってるか?」

 彼みずからつぎ分けてくれたサラダを受け取りながら、この質問に答える。

「うーん……よくわからないです。理解できてるのかできてないのか。すればするほど、不安になるっていうか……」

「まあ、そんなもんだろ。やったらやっただけ、疑問点が出てくるってのはよくあることだ。けど、わかった気になるより、そっちのほうがいいと思うけどな」

「あ、似たようなこと、母にも言われました」

 大学受験前、模擬試験を受けまくっていた時期のこと。

 第1志望だった今の大学の合格圏内に入っていたにもかかわらず、悶々としていた私に、母がかけてくれた言葉。

『やればやるだけ、わからない部分は増えていく。焦らずに、ひとつずつクリアしていきなさい』

 ついに自信がつくことはなかったけれど、結果合格することができたので、あのときはあれでよかったのだろう。

 そう、思うようにしている。

「つーか、茉莉花のお袋さん。すげぇ若いのな」

 母のことを口にしたからだろうか。感嘆を漏らすように彼が言った。

 よもや、自分と歳がそれほど違わないとは夢にも思っていないだろう。彼が驚くのを承知で、私は母の年齢を彼に暴露した。

「うん。39だからね」

「……は?」

 予想どおり、彼はポカンとしてしまった。数字を聞いてそれを飲み込むまで、しばらく時間を要したご様子だ。

「いや、だってそしたら俺と5つしか変わんねぇじゃん。……え? まさか高校のときの?」

 思考がそちらへと流れていってしまうのも、仕方がないことだと思う。『そういうのに偏見があるわけじゃねぇけど』と、彼は付け加えた。

 おたおたする彼に、私は明るく笑って事実を伝える。

「あははっ、違いますよ。……母とは、血が繋がってないんです」

 なるべく、場の空気をよどませることのないよう意識しながら。

「え……?」

 表情が歪むことのないよう意識しながら。

「血の繋がりがないのに、私を引き取って育ててくれてるんですよ。女手ひとつで」

 近いうちに、彼にはちゃんと話さなければならないと思っていた。私の生い立ちを。

 彼とずっと一緒にいたいから……。

 見計らっていたタイミング。今が、そのときだ。

「私を産んでくれた母親は、5歳のときに交通事故で亡くなったんです。それからしばらくは父とふたりだったんですけど、私が小2のときに母と再婚して……」

 包み隠すことなく、淡々とありのままを告げた。

 父がアルコールにむしばまれていったこと。仕事を辞めてしまったこと。当時から、母はひとりで奮闘してくれていたこと。

 さすがに、彼の顔を直視して発言することはできなかった。

 とくに、父に殴られ、負傷したことを告げる際には、当時の情景がまざまざと蘇り、俯いてしまった。

「怪我自体はたいしたことなかったんですけどね。でも、母は激怒して、私を連れて家を出ました。……すごかったですよ。出て行くとき、バケツいっぱいの水を思いっきり父にぶっかけてました。『頭冷やせっ!』って」

 どうして殴られたのか、今となっては理由も思い出せない。たぶん、私の父に対する態度が気に入らなかったとか、その程度のことだろう。

 父のことを怖いと思ったことは一度もない。ただただ情けなくて、腹が立って、憎くて憎くてたまらなかった。……今でも、それは変わらない。

 乾いた笑みをこぼす。

 私のこの重たい話を、朔哉さんは黙ったまま、真剣に聞いてくれていた。

 おそらく、彼はずっと私のほうを向いてくれていた……と思う。けれど私は、なんとなく、まだ彼と目を合わせることはできなかった。

 静けさが、ひしひしと身に突き刺さる。

 彼にどんなふうに思われただろう。可哀想だと思われただろうか。……面倒臭い家庭だと、思われただろうか。

「……今までずっと、『親子』ふたりで頑張ってきたんだな」

「え?」

 ところが、彼が私にくれた言葉は、予想外のものだった。

 予想外に、とてもとてもあたたかい言葉。

「直接ふたりのやり取り目の当たりにして、今のお前の話聞いて、血の繋がりなんか関係ないって、改めて実感した」

 ここで、ようやく彼のほうへ顔を向けることができた。

 優しい顔、優しい瞳。

 彼の姿が、彼女の姿と重なる。

 入院していたあの日、鈴原先生に話したあのとき、先生も同じことを言ってくれた。

「尊敬するよ。茉莉花を立派に育てたお袋さんにも、真っ直ぐ育った茉莉花にも」

「……っ」

 無意識に、ぽろぽろとこぼれる雫。頬を伝い、顎の下へと流れ落ちた。

 張りつめていた心の糸が緩み、緊張がほどけていくのを感じる。

 歳を重ねれば重ねるほど、母の苦労を理解できるようになればなるほど、感謝をする一方で、母に対する罪悪感が募っていった。

 血の繋がりなんか関係ない——この言葉に、私はまた救われた。

 それから、私が落ち着くまで、彼は静かに見守ってくれていた。はっとした私は、慌てて涙を拭い、彼に食べるよう促す。

 止まってしまっていた互いの箸を再度動かし、半時間後、私たちは食事を終えた。

「ちょっと出てくるな。すぐ戻るから」

 片づけを完了させ、私が試験勉強を再開した直後のこと。そう言って、彼は出かけてしまった。行き先は不明だが、手元から車のキーが覗いていたので、少し距離のあるところに行くらしい。

 ……すぐに帰ってくるって言ってたから、大人しくすることしてよう。

 そう意気込んだのもつかの間。

 活字や図表を睨みつけていると、しだいに視界が狭まってきた。頭も重たい。

 エアコンのおかげで室温は最適だが、それ以上にベランダの大きな窓から差し込む陽光が、ポカポカとして実に心地よかった。瞼がトロンとなる。

 指のあいだからペンが転がった。左腕は枕代わりだ。

 押し寄せる睡魔に抵抗することをあっさりと諦め、私は意識を手放した。



「…………か」

 遠くのほうで声がする。エコーがかかって、はっきりとは聞こえない。

「……りか」

 だんだんと耳もとに近づいてくる。

 間違いない。大好きな、彼の声だ。

「おい、茉莉花」

「ん……」

「気持ちよさそうに寝てるとこ申し訳ねぇんだけど、そろそろお袋さん迎えに行かないと」

「……? ……わっ!!」

 体を揺さぶられ、薄れていた意識が鮮明になった。声を上げると同時に、毛布を掴んだまま、勢いよく飛び起きる。それから、ソファに座り直し、乱れた髪を手櫛で整え、時刻を確認した。午後3時半。一時間はゆうに眠りこけていたらしい。

 ……って、あれ? 私、座ったままテーブルに頭もたげて寝てたはずなのに。……もしかして。

「わざわざソファに上げて、毛布かけてくれたんですか?」

「ん? ああ、ベッドまで運ぼうかどうしようか迷ったんだけどな。毛布持ってきたほうが早ぇなって思って」

 やっぱりかっ!!

「ご、ごめんなさいっ!!」

 随分と大胆に体を動かされているのにもかかわらず、全然気がつかなかった。

 他人様のお宅でどんだけ爆睡してたんだ、私はっ!!

「それだけ疲れてたんだよ。休めるときに休んどけ」

 自己嫌悪に陥っている私のことを、なんとも温情深い言葉でねぎらってくれた彼。『ほら』と、私に合わせて右手を差し出してくれた。その手を取って、ソファから立ち上がる。

 そして、朝と同じように、私たちはウミネコの舞う湾岸へと出発した。




 ホテルの駐車場で待つこと約10分。軽やかな足取りで母がやってきた。

 もっとくたびれているかと思ったのだが、まだまだ余力がありそうだ。

 理由を聞いてみると、大学時代や以前の職場での友人や知人が何名か出席していたらしく、まるでプチ同窓会のような懐かしい気分を味わえたのだそう。『よかったやん』と声をかけると、『みんな年とってたわ。私が一番変わってなかったな』と、翠節を炸裂させていた。

「夕飯一緒に食べられたらよかったのに」

「残念やけどな。今度はゆっくり遊びにくるから、またそのときよろしく頼むわ」

 フライト時刻までそれほど時間に余裕がなく、このまま空港に直行することとなってしまった。本日のディナーは、次回に持ち越しだ。

 母のキャリーケースは、今朝家を出る際、あらかじめ彼の車のトランクに積み込ませてもらっていた。驚くくらいに少ない荷物。昨夜、そのことを母にこぼすと、『化粧品とかあんたの使うし。部屋着も貸してちょうだい』と涼しい顔で言われてしまった。

 まあ、メイク道具も普段から若い子と同じもの使ってるし、体格も私とほぼ同じだから、べつにいいんだけどね。

 空港に到着すると、母はまず搭乗手続きを済ませた。土曜日ということもあってか、比較的人足は多い気がする。建物が広いおかげで閉塞感をおぼえるほどではないが、人混みがあまり得意ではない私にとっては、少々つらかった。

 母の希望で、某有名コーヒーチェーン店へと入った私たち。時間の許すかぎり、ここでブレイクすることにした。

「成長したな、茉莉花。まさかコーヒーが飲めるようになるやなんて」

 コーヒーをすする私を見て、母がしみじみとこんなことを言った。

「大人になりましたから」

 これに対し、ドヤ顔で応えて差し上げる。

 5年くらい前までは、コーヒーなんて苦いものを口にすることなど、一生ないと思っていた。せいぜいカフェオレ止まりだと。

 ところが、今ではブラックなんてハイレベルなものまで飲めるようになってしまった。

 人間、変われば変わるものだ。

「あんたも22かー。……そら、お付き合いする人もできるわな」

 コーヒーカップ片手に目を伏せ、どこか安心したように母がもらした。思わず隣に座っている朔哉さんと顔を見合わせる。彼も、私と同様、母の言葉の真意は読みとれていないようだった。

 そんな私たちを併せて視界に収めると、母は静かに『母』としての気持ちを吐露しはじめた。

「ずっと心配してたんよ。私たちの離婚のせいで、男の人のこと避けてるんとちがうかって。……好きな人ができへんのとちがうかって」

「え……」

「あんな派手な別れ方したから、トラウマになって当然やろなって。あのときは、あんたが殴られたとこ見て、私も頭に血が上ってしまって……」

「そんなっ……お母さんは悪くないやん! あのとき、あの家から連れ出してくれて、私ほんまに嬉しかったもん」

 正直、父の顔を見るのもうんざりしていた。

 毎日毎日、何もせずに家で酒を浴びるだけ。外から帰ってきたかと思えば、手にぶら下げているのは酒瓶だった。

 思い出すだに忌々しい。我慢の限界など、とうに超えていた。

「嬉しかったもん……」

 今にも消え入りそうな声。

 母は、困ったように微笑みながら、何も言わずに私を見ていた。

 親子の間を流れる重たい空気。

「……この子は……茉莉花は、本当にいい子です」

 その空気を打破してくれたのは、朔哉さんだった。

 私と母の視線が、彼に当てられる。

「勉強もバイトも必死で頑張って……この歳で、なかなかできることじゃない。尊敬します、本当に。……今までこの子が懸命に背負ってきたものを、これからは一緒に背負っていきたいと……支えていきたいと、そう思っています」

「朔哉さん……」

 このときの彼の横顔は、これまでで一番凛々しく美しいものだった。

 私は、誰かに褒めてもらいたいと、認めてもらいたいと、そんなことを望んでいたわけではない。そんなことを望みながら、耐えてきたわけではない。

 けれど、この短期間で、彼はちゃんと私のことを理解してくれていた。私の気持ちを汲んでくれていた。しかも、これからのことを、自分の意志を、母の前で口にしてくれた。

 彼のこの想いが、私にとっては、たまらなく嬉しかった。

「……春から、病院に戻られるんですよね?」

 彼に感化され、母が口を開いた。

 その目には、うっすらと涙が滲んでいる。

「はい」

「じゃあ、ますますお忙しくなりますね。……茉莉花! あんた迷惑かけんように気ぃつけや」

「わ、わかってるもん!!」

 目に光るものを払拭するように、バシッと私に釘を刺した母。『失敬なっ!』と言いたいところだが、彼との出会いをかえりみると、反論などできるはずない。

 プンスカしている私とは対照的に、母の表情は喜びに満ちていた。

 そのとき、神戸行きの乗客に向けてのアナウンスが流れた。どうやら搭乗開始時刻が近づいているらしい。私と朔哉さんは、母を見送るため、保安検査場へ。

 母とは、ここでお別れだ。

「これ、よろしかったら」

 検査場を通過しようと足を進める母に、彼が渡したものは、銀座にある紅茶専門店の袋だった。高級感溢れる厚紙の黒い袋。昼間出かけたのは、わざわざこれを購入するためだったのだ。

「えっ、いいんですか? ……わっ、すごいっ!」

 中身は、茶葉とサブレのセットとのこと。

「少しかさばってしまうかもしれませんが」

「いえいえ、とんでもない! ありがたくいただきます」

 母の周りに音符が飛んでいるのが見える。超ご機嫌だ。

 さすが朔哉さん。母のツボを的確に押さえている。……というよりも、実は母のツボは私のツボでもあるのだ。

 私が喜びそうなものを、母にも選んでくれたんだろう。

「ありがとうございました、速水さん。本当に、お世話になりました」

「いえ、こちらこそ」

「……お世話になりついでに、もうひとつだけ」

「?」

 突然、真剣な顔つきで、母が彼と向き合った。伸ばされた背筋。改められた態度。

 いまだかつて、こんな母を私は見たことがない。

 いったいどうしたんだろう。私まで妙に緊張してしまう。

「この子があなたに出会えたのも、きっと何かの『縁』やと思います。私も、この子とあなたの『縁』を、大切にしていきたい。……まだまだ未熟で、ハラハラする場面もあるとは思いますけど……娘のこと、どうかよろしくお願いします」

 あなたにこの子を託したい——まるで、そう懇願しているようだった。

 彼は、一度だけ力強く頷くと、母に対し、深々と頭を下げた。

 このときの母の姿を、母の言葉を、私はけっして忘れることはないだろう。

 無事に検査場を通過した母は、弧を描くように大きく手を振ると、長い長い通路を颯爽と歩いていった。

 その背中は、どことなく晴れ晴れとしていた。

「……行っちゃった」

「寂しいか?」

「ううん。平気」

 ふるふると首を横に振って、笑って答える。

 今この東京で精いっぱい頑張って、自分の夢を叶えること——それが、一番の親孝行になると、私は信じている。

「どうする? 飯食って帰るか?」

「うーん。外食もいいけど、朔哉さんのご飯が食べたいな。……だめですか?」

「べつにいいけど……なんか食べたいもんでもあんのか?」

「チーズフォンデュ!」

「え、マジで? また?」


 それに、この人がそばにいてくれるから、


「だって美味しいもん。体あったまるし。明日の試験も、頑張れそうな気がする」

「はいはい」


 私は、大丈夫だ。

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