第13話 買い物

 結局ホリーとは話しただけで遊ばなかったから、ローランの家を出てからそれほど時間が経っていない。どうせフレンはまだ眠っているでしょ。本当はフレンと買い物したかったけど、先に少し見て回っちゃおう。

 その前に宝石を売ろう。いつまでも持ってたら、呪い魔法を使った時に威力が減っちゃう。とりあえず、この武器屋さんに入ってみようかな。

「らっしゃい!」

「すみませーん。この宝石売りたいんだけど」

 店員さんは「どれどれ」と言いながら宝石を見る。

「良い宝石だね。でも何かの魔法に使われた形跡がある。少し値は下げさせてもらうよ」

 なんとなく入ったお店だったけど、店員さんは優秀な人みたいだね。ちゃんと宝石のことを調べてるように見える。少なくてもシスターよりかは詐欺してない。

「その宝石で武器を買おうと思ったら、どれなら買えるの?」

「そうだな。杖ならその手前にあるやつだな」

 杖を買うつもりはないけど、時間はあるから少し見てみる。どうやら闇属性の杖はないみたいだね。火とか風を使う人が多いらしいから、ほとんど火か風の杖だ。杖を買うなら専門のお店に行かないと駄目だね。

「剣は?」

「剣ならそこからそこまでだな」

 うーん、見ただけじゃ分からないな。聞いてみようかな。

「その宝石で買える一番良い剣はどれ? あ、一応言っておくけど私が使うんじゃないよ」

「剣をプレゼントとは変わってるね。一番いい剣なら……これだな。これだとおつりは渡せないが、他の剣よりはずっと長持ちするはずだ」

「強いの?」

「そこらの剣よりは強いな。もちろんこれより強い剣はいくらでも存在するが、プレゼントしたらきっと喜んでもらえると思うぞ」

 じゃあ、これにしようかな。


🌙


 どうにかローランの家へ戻ってこられた。剣が重たくて何度も転びそうになったよ。

「フーレーンー」

 返事はない。まだ眠っているみたいだ。もう、寝すぎ。

 部屋に入るとやっぱり寝てた。

「あーさーだーよー」

 剣を置いて、フレンの掛け布団をめくろうとしたら、掛け布団を掴んで抵抗してきた。もう、本当にどうしたの。

「あと五分……」

「寝すぎだよ」

「寝れなかったんだよ……。少しでいいからあっち行ってくれないかな」

 そういえば昨日は、フレンって何もしてないんだっけ。死んだふりなんてしょうもないことはしてたけど。ずっと寝てたから、夜中は寝られなかったのかな。それなら寝させてあげよう。

「なんて言うと思ったか!」

 布団に籠ったフレンに馬乗りになる。さて、どうしてあげようか。

「やめてくれー」

 ふふ、そんなに嫌がっても止めないよ。ていうか、今日のフレンはノリがいいね。意地悪のし甲斐がありそう。

 そう思ったのもつかの間、部屋のドアが開いて誰かが入ってきた。

「ローラン……って、あんた誰?」

 魔女が入ってきていた。年齢は私と同じくらいかな。魔女の帽子をかぶっていて、大きな杖を持っている。

「私はルナ。ローランは朝から出かけてるよ」

「そう。邪魔したわね」

 出て行った。誰だったんだろう。

 まあいいや。お楽しみの続きをしよう。


🌙


 ふふ、満足。鎧を着ていないフレンは全身が弱点だね。こちょこちょ楽しい。

 フレンはぐったりとしている。さっきまで元気に叫んでたのに。やっぱり貴族は我慢が足りないね。

「ねえフレン。どうして眠れなかったの? 体調悪い?」

 一応聞いてみた。大丈夫そうに見えるけど、体調が悪いのなら大変だ。

「喉と……腹痛が……」

「あれだけ叫んで笑ってたら痛くなるよね。で? 大丈夫? 大丈夫だよね?」

 なんとなく脅すように言ってみた。

「もしかして怒ってる? また僕、何かしたかな……」

 鈍いフレンでも気づいたか。まあ、演技なんだけど。残念賞をあげたいね。

「で、どうして眠れなかったの?」

「それは……ごめん。言えない!」

「あのね。私はフレンのことを心配しているんだよ。眠れなかったことを怒ってるんじゃないの。絶対に怒らないから言ってみなさい」

 お母さんみたいなことを言ってみた。フレンが「本当?」って言ってくれたら良かったけど、そこまでノリはよくなかった。

「その……キスのことを思い出したら眠れなかった」

 ……ふむ。

「仕方ないじゃないか! キスなんて初めてだったんだ! ルナが八つも年下でも、隣にキスした相手が眠っているんだ。気にしてしまって眠れなかったとしても仕方がない! 僕は悪くない!」

 なるほどね。

「フレンは悪くないよ」

「ルナ……」

「フレンがロリコンでも私は嫌ったりしない。大丈夫だよ」

 フレンは動かなくなった。血を吐いて死ななかっただけマシかな。

 一言「ロ・リ・コ・ン」って言わなくて良かった。そう言ってたら間違いなく死んでたね。良かった良かった。


🌙


 復活したフレンに剣を渡した。もう一つの宝石は鎧に使ってあげようかな。でも、こっちは少し傷がついているから期待できないね。

「ありがとう。少し重たいけど大丈夫だよ」

 フレンは片手で持ち上げたり両手で持ったりしている。そっか、少し重たかったか。もう買っちゃったから、次買うことがあったら気をつけよう。

「こんな優しくて気が利く女の子が隣にいたら、ロリコンにならない方がおかしいよね。だからフレンは悪くないよ」

「本当にやめてください……」

 本気で嫌がってるね。もう少し言いたかったけど我慢してあげよう。

「それで、旅の続きはどうするの?」

「まずは食料を調達した方がいいと思うんだ。急がないといけないのは分かってるけど、それでまたルナを怪我させたら、今度こそ自分を許せなくなる」

 そっか。フレンなりに考えてくれているみたいだし、これからのことはフレンにお任せしようかな。

「まずは資金調達にこの町の傭兵ギルドへ行こうと思う」

 反対する理由は思い浮かばなかったから頷いた。

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