第2話 予約投稿が**時00分「丁度」にしか投稿できないってどういうことだよ!!!


前にも言ったかもしれないけど、この世界は異能バトルの世界らしい。


よく分からない能力が与えられて、戦ったり、友達を作ったり、恋をしたり、ラッキースケベに巻き込まれたりするアレだ。


いまさらいちいち世界観やルールを説明するのも馬鹿らしくなるような、ありきたりなアレだ。


とりあえずそんなアレ世界アレアレ転生してアレ能力を得たわけなんだけど、アレ能力アレ名前アレカクヨムで、アレ能力アレ効果アレ使い方アレ不明だから、アレ正直これから先どうすればいいのかわからず、途方に暮れているわけだ。


と、

不意に1人の少女が現れる。

平凡な顔。平凡な髪色。平凡な髪の長さに、平凡な体型。

平凡が服を着て立っているような少女が、そこにはいた。


「え、ちょっと、ひどくない!?」

「きょとん?」

「口で「きょとん」って言うな口で!」

    きょとん

「え!? ちょっと待って!? 今どうやって言ったの!?」

閑話休題そんなことより、そろそろ本題に入ろうぜ


どこか腑に落ちない表情をしながら、少女はしぶしぶ話を進める。


「とりあえず確認だけど、あなたが《カクヨム》使いであることは間違いない?」

「ああ、まあな」

「そう。ならいいの。あたしは《予約投稿》能力の使い手。名前は」

「――《予約投稿》?」

「そう! 《予約投稿》の使い手よ!」

「ちなみにどんな能力なんだ?」

能力――それが《予約投稿》」

「ふーん」

「ふーん。って、それだけ? まだこの能力の恐ろしさが分からない?」

「別に」

「……そう。あなたは思ったよりもずっとお馬鹿みたい。少しでも想像力があれば、すぐにわかるはずなのに」


やれやれと見下すように少女は笑い、


「たとえば、これから一週間かけて、あたしが攻撃を大量に用意する。そしてそれを次の一週間の任意の時間に発動させて、あなたを攻撃する。あなたはいつ、あたしの攻撃が来るかは分からない。一秒後に来るかもしれないし、三日間来ないかもしれない。それだけであなたは精神を消耗する。さらに攻撃が当たれば、肉体も消耗する。ね? 簡単でしょう?」


自慢げに語りあげ、無い胸を張る。

ふんすふんすという鼻息すら聞こえてきそうだ。


「あー、でも、なんか自信満々のところ悪いが」

「?」

「その《予約投稿》なら、俺にでも使えるぞ?」


空気が凍る。


「てかさ」

「な、なによ」


何故か怯えた様子の少女を見下ろしながら


「なんでこの《予約投稿》、**00稿!!!」

「!?」

「おかしいだろ! 確かに、時間を指定して公開ってのは選べるよ? でもさ、全部、**時00分じゃん!? 確かにさ、これが「なろう」とか「pixiv」だったら0:00ちょうどに公開すれば有利とかあるよ? でも、今のところそういうの無いじゃん? しかも、他の時間も00分丁度しか投稿できなかったら、絶対に同じ時間に被るじゃん!?」

「で、でも……」

「どの時間に予約投稿しても地獄だよ! だって、同じ時間に大量に自動で投稿されるんだもん! 確かに、たくさん作品をフォローされれば別だけど、そうじゃない人間はみんな同時に投稿されたら、埋もれるじゃん! あっという間に見えないところに行くじゃん!」

「そ、それは……」

「それに、そもそもさ」


涙目の少女を見据えて


「《予約投稿》は、使!!!」

「……」

「え、てことは、キミ、他に能力が無いの? 誰もが使える《予約投稿》意外に能力が無いの? かわいそうな子なの? 無能力者なの? それなのに自信満々にでてきちゃったの?」

「ぅ……」

「ん? どうしたの? 大丈夫? 泣きたいの? 悲しいの? 悔しいの? かわいそうに。ほら、おうちに帰っておねんねしてこよっか?」

「うぅ……」

「大丈夫? おうちに帰れる? あ、大丈夫だよね! だって《予約投稿》が使えるんだから! 《予約投稿》があればおうちに帰れなくても、学校の授業中でも、お仕事中でも、勝手に投稿できるもんね! さっすが《予約投稿》だ! 何故か00分丁度にしか投稿できないけどね!!!!!!」

「ば、ば、ば、ばかーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」


涙声の罵声を残しながら、《予約投稿》の使い手の少女はどこかへ行ってしまった。


ああ、勝利とはなんと虚しいのだろう。

そしてこの勝利がいったい何になるというのだろう。


そんな哲学的な思いに浸りながら、俺は激闘の1日を終えるのだった。








【次回予告】

次回「第3話 この世界の全ての真実と、最初の戦い(仮)」


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