第十九話

 大陸暦100年7月25日、朝


 ワイバーンが、目の前に突然現れ、俺を無視して下を向いた。

 そのワイバーンはそのまま下に向かって口を開けた。


息吹ブレスか……?ってマズイ!」


 この方向は……メア達がいる方向じゃねえか!


「みんな逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!」


 俺は急いで叫ぶが……


 ゴォッ!


 一瞬早くブレスが放たれ、冒険者の集団に直撃した。

 土煙が上がる。


「あ…ああ……」


 俺は壁から飛び降り、急いで駆け寄る。

 土煙が晴れる。

 後に残るのは、凄惨な光景だった。

 殆どが死んでいる。

 中には死体すら残らなかったものもいるようだ。

 辛うじて生きている人も、殆どが何処かの部位を欠損していた。

 そして……


「…グフッ……」

「メア!」


 我らがギルドマスター、メアは、欠損こそしてないものの、辛うじて生きている、と言った状況だった。


「クソっ!」


 やるしかねえ!


「陽菜ぁぁ!俺にしばらくの間フェアリーソングをかけろぉぉ!」


 陽菜の方向を見ると腕で大きく丸を作っていた。

 それと同時に、魔力が回復するような感覚があった。


聖域サンクチュアリー!!!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


聖域サンクチュアリー

消費魔力:250

聖域を広げ、その中にいる人のあらゆる怪我を治し、死後硬直の始まっていない死体をも蘇生する。

ただし、蘇生に使用した場合のみ、使用後は日をまたぐまでは蘇生できない。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 俺を中心として、魔法陣が広がる。

 その範囲内にいた、死者含む全員の身体が光に包まれ、気がつけばみんな五体満足で寝息を立てていた。


「間に合った……!」


 それでも、死体がないものは当然蘇生など不可能だ。


 さて………もう一つやることがあるな。


「来いよワイバーン。処刑してやる。」


 魔力は陽菜のお陰で完全回復だ。消し飛ばされた奴等の仇、ここで討ってやる。



〜メア視点〜


 魔物が大量に攻めてきたというので、急いで西の壁の外に駆けつけたら、既に魔物はほとんど減らされていた。

 壁の上を見るとユウタがいる。


「ユウタがやったんだな、これ。」


 まあ、なんでもいい。とにかくこっちに向かってひたすら走っている魔物の掃除に向かった。

 その時、嫌な予感がした。


「みんな逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!」


 というユウタの声と、何かが飛んでくる音が、同時に聞こえた。

 そして、私はそのまま視界が暗くなった。

 夢心地に、


――聖域サンクチュアリー


 という、ユウタの声が聞こえ、身体全体が暖かくなったが、気のせいだろう。

 そのまま、私は意識を手放した。



〜優太視点〜


 さて……処刑してやる、なんて言ったけど、俺にできるのか?


「グルオァァァァ!」

「まずは小手調べだ!」


 俺は無詠唱で転移門を開く。ひとつは自分の手元に。もう一つは、ワイバーンの背後に。そして、


「【ドレインシード】!」


 とりあえずは、吸収させてもらう!

 俺の手元を離れた種は転移門をくぐりそのまま、ワイバーンの背中に吸い込まれ……


 コツン


 弾かれて落ちてきた。って硬いな!?


「次はこれだ!【フレイムランス】!」


 当然追尾機能付きだ。しかしこれも……


 ジュワッ


 あたった瞬間に消えてしまう。

 どうやら威力の低い魔法攻撃を無効化してしまうようだ。


「仕方がないな。」


 そう俺は呟き、俺は自分の日本刀を抜き放った。


 なんのことは無い基本的には普通の日本刀だ。

 向こうの世界で師匠とか父さんとかがよく変な技やってたけど、魔力操作というものを覚えて理解した。

 魔力を使って技を放ってたということに。


 ……て言うか、あの人達、なんで魔力を知ってるんだ……


 まあ、細かいことは気にしない。今はこのワイバーンを倒すことに専念する。


 ワイバーンの背中に転移して、ワイバーンの背中に乗り、そのまま斬りつける。


 ガキン


 金属同士をぶつけた音がする。


「かってえな!」


 次に、刀に魔力を通し、技を放ってみる。


煉獄れんごくのやいば!」


 煉獄ノ刃、は刀や剣を魔力で作った炎で包み、切ったり刺したりした時に内部から焼き殺すという技だ。

 刀が赤紫色の炎に包まれる。そして、俺はそのままワイバーンに斬りつける。


 ザッ


 軽く傷が入り、傷口からワイバーンの中に火が入っていく。


「ギャアァォォォォォ!」


 ワイバーンが悲鳴を上げる。ようやくマトモなダメージが入っだようだ。


「よし……ってうおっ!?」


 まあ、当然ワイバーンが邪魔な俺を振り落とそうと暴れ始める。高さは約500m。死ぬ事は無いだろうが、確実に骨折はする。そこを襲われたら確実に死んでしまう。


 ……ん?普通なら落ちた時点で死ぬって?

 ……気にするな。


 とにかく、落ちたら負けなので、決着をつけるべく、刀を鞘にしまう。


 足場を固定するために、先程つけた傷口を蹴り砕いて広げ、爪先を中に入れて固定する。


烈覇斬れつはざん。」 


 烈覇斬は、剣や刀に魔力を充填し、それを解放しながら振るう事によって対象を神速でバラバラにする技である。

 これの上位互換もあるんだけど、いずれ使う事になるだろう。


 ワイバーンは全身に赤い線をつけたあと、そのままバラバラになって落ちていく。

 一緒に落ちるのを直前で地面に転移する事で回避する。が、転移の時に少し上に転移してしまい、着地でコケる。


 ……ダサい。

 ま、まあいずれにせよ。


「勝った……!」


【レベルアップしました。】

【レベルアップしました。】

【レベルアップしました。】

【レベルアップしました。】

【レベルアップしました。】

【レベルアップしました。】


 疲れた……。

 上からワイバーンの生肉と香ばしい匂いをさせる焼けた肉が降ってくる。


 あたりを見回すと、助けた人達がみんな起きていて、こちらをじっと見つめていた。


 さて……これからの説明が面倒くさいな……。


 そんな中、復活した陽菜がコチラに駆け寄ってくる。


「なにやってんのよバカ!心配させんじゃないわよ!」

「ってもなあ……」


 あー、殴られちゃうかな……


 と、変な心配をしていると顔に水が落ちてくる。


 ……泣いていた。あの陽菜が泣いていた。


「死んじゃうかと……思ったじゃないの……。」

「……悪い。」


 さて、ついでに頼んどくか。


「陽菜。頼みがある。」

「グスッ。何よ?」

「この後の説明、頼んだぞ……」

「……はい?」


 俺は陽菜の珍しい泣き顔を目に焼き付けて、そのまま何かから逃げるように意識を手放そうとする。


「優太ぁぁ!逃げるなぁぁ!」


 フッもう遅い。

 そのまま目を閉じて……


 ドゴッ


「グフッ……」


 殴られました。


「ひ、陽菜、さっきまで戦ってて疲れたやつを殴るとは!見損なったぞ!」

「面倒なことか弱い女の子に任せる男の子もダメだと思うわよ。」


 どこがか弱いだどこが。


「優太君?」

「なんでもありません。」


 神速の土下座。この時俺は光を超えた自信がある!


「……ごめん。私が悪かったわ。そんな情けない姿を見せるほど追い詰められてたのね……。」

「分かったならそれでいい。」

「ん?なにかな?」


 陽菜に青筋が立つ。怖いです。


「ユウタ。陽菜といちゃいちゃするのはいいが、私の質問に答えてもらう。」


 はあ……めんどい事になったな。


「いいけど、次でいいか?」

「は?次?」

「こっちの話だ。」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


名前:ユウタ ジンノ

種族:人間族、異世界人

ステータス


レベル60


体力…750/750

魔力…700/700

筋力…238(+50)

敏捷…240(+50)

耐久…246(+3)

器用…185

精神…250

意志…235

幸運…7


装備

神野優太の日本刀

革の鎧



スキル

鑑定Lv2


詠唱破棄Lv1



魔法

光魔法Lv1

 ヒール

 ハイヒール

 聖域サンクチュアリー

 フェアリーソング

 フラッシュ

 ホーリーソード

炎魔法Lv4

 フレイムアロー

 フレイムランス

 フレイムウォール

 ファイヤーストーム

 ファイヤーボール

 エクスプロージョン

水魔法Lv2

 記憶操作

 ウォーターボール

風魔法Lv2

 エアーカッター

 

木魔法Lv1

 ツリーカーニバル

 ドレインシード

雷魔法Lv2

 ライトニング

 サンダーボルト

 トールハンマー

 スパーク

時空魔法Lv5

 転移門

 転移

 アイテムボックス

 召喚魔法

 フィジカル・アクセラレーション

闇魔法Lv2

 ダークボール

 ダークエクリプス

 ブラックドレイン

 


複合魔術

 風+光:閃光弾

 

 

 

称号

異世界人


武術の心得



残金:558540


ギルドランク:D

チームランク:E

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