第十一話

 大陸暦7月19日


 俺は、何者かに攫われた。運がいいことに、手錠が脆かったらしく、簡単に脱出できた。

 家に帰るなり、メアに心配され、抱きつかれた。とっても柔らかかった…じゃなくて。

 これからも俺を狙うやつがいるかもしれない。この家は、この世界ではもう、俺の家だ。この家の者を俺個人の問題に巻き込む訳にはいかない。

 決着がつくまでは旅に出ておこう。

 一週間あれば、自分を守るくらいには強くなれるだろう。そう考えた俺は、メアにこう告げた。


「俺、決めた。一週間後にこの家を出て、旅に出るわ。」


 と。すると、メアが


「なんでだ?」


 と、聞いてきた。

 答えようとした時、またメアが口を出してきた。


「まさかとは思うが、迷惑を掛けたくない、などといったふざけた回答じゃないだろうな。」


 答えようと開いた口を塞げなくなり、パクパクしてしまった。


「そうか……………」


 メアがため息を一つ。そして…


「バカ野郎!」

 パンッ


 と、ビンタを一発もらった。

 ………痛い。


「さっきも言っただろう!私たちは家族だと!今更迷惑がなんだ!既に匿っている時点で迷惑だ!」


 酷い言われようだ…


「でも!だからと言って!出ていくことは…無いじゃないかよ…………」


 ………泣き出した。メアが、泣き出した。


「ごめんメア。でも、な、怯えながら暮らすのは嫌なんだ。幸い、相手が誰だか目処はついているしな。それに…」

「でも!」

「最後まで話聞け。それにだな、旅に出るといったが、帰らないとは言ってないぞ?」


 その時のメアの顔は、ポカンの文字がすごく似合いそうだった。


「第一、ここはもう俺の家だ。出ていくなんてもったいない。」


 そう言うと、メアは俯いて顔をプルプル震わせ始めた。心無しか、耳が赤い気がする。


「どうし「ユウタのバカァ!」グフッ」


 理不尽だ!?


「そういう事は先に言え!全く…」


 まあ何にせよ、メアに笑顔が戻ってよかった。


「師匠とお兄ちゃん、いい雰囲気でしたねー」


 ニヤニヤしながら出てきたリリィの頭を軽く小突いた。


「俺にゃ好きな人はもう居るんだ。んな事にゃならんから。」


 そう言うとリリィは


「つまんないの。」


 とすねてしまった。え、楽しむつもりだったのか。末恐ろしいはこの娘。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 〜夕食時〜


「そういえば、魔族って人間に凄く似てるんだな。」


 あの覆面野郎、人間にしか見えなかったからなぁ。


「え?いや、しまえるけど、羽生えてるし目立たない程度の角も生えてるぞ?」


 え?


「え、魔族じゃ、ない?」

「いや、誰がだ?」

「俺を攫った奴だよ。」

「それはそうだろうよ。魔族がユウタを攫う理由など、無いからねえ。あるとしたら、ここらへんの魔物を狩ってくれ、とかぐらいだろうし…」

「え?魔族って人間と対立してんじゃないの?それに対抗するために俺が呼ばれたんじゃないの?」


 だったよな、うん、俺の記憶が間違ってなければ、だが。


「何を言っている?今、人間族の国々、魔族の国々、そして獣人の国々と別れてはいるが、共存している国も結構あるぞ?寧ろ、ここみたいに一つの種族しかいない国のほうが珍しいのだよ。」


 ………ええ?


「え、でも、城ではそう聞いたんだが…」

「……………少しこの話、きな臭くなってきたな。ユウタは、城ではそう聞いたんだな?」

「ああ、聞いた。」

「何故だ……国王は何を考えてるんだ…!」


 メアが怒り始めた。怖い。


「すまんな、驚かせて。ユウタ。魔族は敵対などしていない。ユウタに会う前に旅に出ていたが、どこもそんなことは無かった。旅に出るというなら、その先入観をまず無くせ。魔族を見ただけで攻撃していたら、君が悪者になる。」


 驚きだ。なにせ、ここに来て最初の方の知識が間違っていたというのだから。


「わ、わかった。」

「いいな?」

「おう。」


 その日の夕食は、何処かピリピリした感じだった。


 お陰で折角のオークの肉が美味しく感じられなかった。

 …だいぶ染まったな、俺も。


 そして、夕食後、メアに『でんわに何を使えばいいと思う?』という質問に『水晶玉とか?』と答えて天才扱いされた。


「なるほど!水晶か!」


 そうして水晶をいじり始めた。暫くして、


 ドォォォォォン…


 水晶が爆発した。

 なんで!?


 それからもまだ続けようとしたので、寝かしつけ(何をしたかは内緒)、自室に戻った。



 そして、自室にてあることを悩んでいた。


「うーん、旅立つにあたって、武器がアイアンソード絶だとなぁ。なんか物足りないんだよなぁ。」


 実に贅沢な悩みである。


「日本刀がほしいな………」


 この世界にそんな物はない。それは分かってる。でも、慣れたものを使いたいというのもあるのだ。


「…………時空魔法で召喚できたりしないかな。」


 そう考えついたら早速行動に移る。時空魔法を想像し、創造する。断じて寒いギャグなんかではない。


そしてついに出来たのだ。召喚魔法が。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


召喚魔法

消費魔力:300

異世界から、この世界のバランスを大きく壊さないと判断される、任意の物を取り寄せることができる。ただし一方通行である。

時空魔法Lv5が必要である。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 あ、まさかのレベル不足か……乱用はしないようにしなきゃな。


 これから寝る前は、時空魔法を使ってから寝ることにした。



翌日、大陸暦7月20日


 さてさて、魔力強化の時間がやってきた。

 個人的には苦手だが、やらなければ強くなることはできない。


「出した魔力を纏う………」


 いや、纏う、じゃ無くて、身に着ける、と発想を変えてみたらどうだ……?全身から魔力を出して……


 ゴウッ


「な!?ユウタ!そんなに魔力を出したら…」


 あ、意識が…無くなってく………


「魔力枯渇を起こすに決まっているだろうが…………」


 お、おやすみなさぁ〜い。


 そうして意識が途絶えた。


 ………


「ハッ!私は何処?ここは誰!?」

「そんな馬鹿なこと言えるんだったら大丈夫だな。」


 貴様!メアだな!


 コホン。魔力枯渇を起こしたんだったな。あんな感じなんだな。


「一応、魔力は回復しているか確認してくれ。」

「ああ。」


 ステータスを開いた。


「え、魔力40も増えてるんだけど……」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


名前:ユウタ ジンノ

種族:人間族、異世界人

ステータス


レベル50


体力…470/470

魔力…400/400

筋力…183(+8)

敏捷…190

耐久…194(+3)

器用…165

精神…198

意志…190

幸運…7


装備

アイアンソード絶

革の鎧



スキル

鑑定Lv1

生物の名前及びレベルがわかる。

パーティーメンバーのステータスがわかる。

物の名前と詳細の一部がわかる。

自分の鑑定レベルより高いレベルの隠蔽がかかってるものは読み取れない。


魔法

光魔法Lv1

 ヒール

 ハイヒール

 聖域サンクチュアリー

 フェアリーソング

 フラッシュ

 ホーリーソード

炎魔法Lv2

 フレイムアロー

 フレイムランス

 フレイムウォール

 ファイヤーストーム

水魔法Lv2

 記憶操作

風魔法Lv2

 エアーカッター

 

木魔法Lv1

 ツリーカーニバル

 ドレインシード

雷魔法Lv2

 ライトニング

 サンダーボルト

 トールハンマー

 スパーク

時空魔法Lv4

 転移門

 転移

 アイテムボックス

 召喚魔法

闇魔法Lv2

 ダークボール

 ダークエクリプス

 ブラックドレイン

 


複合魔術

 風+光:閃光弾

 

 

 

称号

異世界人


武術の心得:武術の経験があるものに送られる。対人型攻撃力の上昇効果が付く。


残金:558540


ギルドランク:D

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