第20話 アーモンドのチョコレート

 コピー機から出てきたのは、学ランを着た男子高校生だった。ただし、前の開いた学ランの中に着た赤いトレーナーと、腰で履いたズボンを留める金のベルトが派手すぎて、ぱっと見高校生に見えない。前髪だけ長めのツーブロックヘアで、色は茶色だった。


 まあ、ヤンキーだ。


「どこ……?ここ」


 出てくるなりそいつは、挨拶もなく、だるそうに聞いてきた。


「いや、あんた誰だよ」


 喧嘩にでもなれば確実に僕のほうが強いから別に怖くはない。

 そいつはしばらく僕の方を見て、答えた。


「宮澤。……あんたは?」

「僕は新宅。彼女は鍵野さん」

「あっそ。で、ここどこ?」

「福山だって」

「福山県?」

「そんな県ないわよ。広島の東の方。ほとんど岡山」

 鍵野さんが横から口を出す。

「ふーん……」

 宮澤はどうでもよさそうに店内を歩き、商品棚の中から、アーモンドチョコレートを手に取った。白地に赤文字で商品名が書いてあるパッケージの、最もポピュラーなやつだ。

 彼は開封テープの先端をつまんで、箱をクルッと回転させて外した。なんだ今の開け方は? 包んでいるセロファンを取って、中身を取り出して食べている。


「俺のことは気にするな」

 はあ? 気にするわ。 なんかこいつ、ただのヤンキーじゃない。少し、ていいうかだいぶ変わってる。

「あのさ、今まで閉じ込められてて、自分から移動してきたたわけでしょ。なんかないの? 聞きたいこととか、逆に知ってることとか」

「ねーよ。放っといてくれ」


 宮澤はアーモンドチョコの2つ目を口に入れ、コーヒーメーカーに向かった。

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