第11話 無限コンビニ・デスゲーム

 わからない。


 ヒウラタクロウとは誰なのか。

 名札があるということは、コンビニの店員なのだろうが、何故高校生に強い敵意を抱いているのか。

 そして、10000人の中で7人が元の世界に戻れるという話だったけど、それは先着7人なのだろうか。他の基準があるのだろうか。

 普通に考えると、ヒウラタクロウの名札は1枚しかないから、先に見つけた人が勝ちってことになりそうだが、明確な発言はなかった。

 何より、ヒウラタクロウの名札がどこにあるのかという、最も大切な事に関して、ヒントすら出してくれていない。


 レジのバーコードリーダーに、大事な役割があるとか言ってたけど、その後何も触れることなくチキングくんは消えていった。


 丁寧に細かく教えてくれているようで、実は核となる部分だけサラッと流している。


 わからない。


「とりあえず……、そのヒウラタクロウさんの名札、探してみようか」


 僕は、部屋の中をガサガサと漁りだした。普通に考えて、コンビニに閉じ込められている以上、クリア条件のアイテムもコンビニの中になければおかしい。また、整然とした店内のスペースより、このバックルームのような散らかった場所の方が、名札が隠されているような感じがする。どこか、宝探しゲームでもやっているような懐かしさ。


 鍵野さんは、モニターに出ているアドレスをスマホに入力していた。


「うーん、この部屋にはないかもしれないなあ」

 雑然としているようで、モノ自体の数は少なく、しばらく探したが、名札は見つからなかった。


 突然鍵野さんが、口を開いた。

「新宅くんも、見た方がいい」

「え?」

「このサイト、早く」

 彼女は、スマホから目を離すことなく言った。


 僕は細かいアルファベットをいちいち打つのが面倒だったため、鍵野さんの横に行き、彼女のスマホを眺めた。


 女の子と距離が近い。

 いや、今はそんな事はどうでもいい。


 スマホの画面は、シンプルだった。白い背景に黒い文字で文章が書かれている。


「これ何?」

「多分、小説の投稿サイト」

「自分で小説書くやつ?」

「そう。確かこれ、最近オープンした『カクヨム』ってサイトじゃないかな」


 投稿サイトにも色々あるようだ。今まで通ってこなかった世界なので、よくわからない。


 彼女は画面を上にスクロールして、一番上の画面に戻してくれた。


 この小説のタイトルらしき言葉と、作者の名前が書いてある。


「無限コンビニ・デスゲーム」

 日浦拓郎

 第1話 カレイ


「ヒウラタクロウだ…」

「そう。これ読めば、何かヒントがあるかも」


確かにそうだ。

僕は、鍵野さんと一緒に、日浦拓郎の小説を読んでいった。

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