つまらないしがらみや一般観念は君の言葉でどうでもよくなった

同棲&学園ラブコメディというと、個人的な偏見かもしれませんが、行き過ぎた性表現のものが多数派を占め、学園ラブコメではなくないか? と、疑問に感じることが多々あります。自分がひねくれてものを見過ぎなんですかね?
そういう意味ではこの作品は真っ当に学園ラブコメとして完成しており、とても好印象でした。
なんと言い表すべきなんでしょうね? カップルのおうちデートの一部始終を覗き見しているような? しかも最初から割とそんな感じです。
基本は一話完結か、またがっても数話であり、物語としてとてもテンポよく読むことができました。
才色兼備で、文武両道なヒロインは些細なミスで主人公と同棲することになった家ではその仮面が剥がれて、主人公のことを何かとからかってはコロコロと表情豊かに彼の反応を楽しみます。
それに主人公も表面上では面倒臭そうにしつつも、だんだんとそれが当たり前になっていき、実際いくつかの事件の折に、彼は家で一人になるタイミングに物悲しさや苛立ちなどの喪失感を露わにしています。
作者様の感情描写や風景描写が秀逸で、脳裏に明るくもその分だけ影のある彼らの青春を鮮明に映し、主人公の悩みや迷いを明るい表情でヒロインがかき乱し、振り回し、最後にまるでなんでもないことのように吹き飛ばす姿はとても痛快です。
しかし、彼女にも悩みがないわけではなく、そんな時に普段ヒロインへの気持ちをあまり見せない主人公が紡ぐ言葉に学園ラブコメモノの良さを感じさせられます。
淡白ではありますが、後半につれて深くなっていく彼らの関係に愛おしさを感じずにはいられませんでした。
最後に筆下手な自分の文章をここまで読んでくださった方に感謝を、ありがとうございます。

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