皮肉によって味付けされた眩しいばかりの音楽への愛

 タイトルから浮ついたよくあるラノベかと思ってたんです。
 けど、読んでみたら普通に素晴らしい文学作品でびっくりしました。

 と、いう言葉でこの作品を片付けることはできない!!

 タイトル詐欺とかそういうレベルじゃない。
 皮肉と奇矯な人物によって塗り固められて、そういう風に見えなくもないが、違う。この作品の本質は、そんな薄っぺらいところにはない。

 キャラクター達が発する言葉は洋画の台詞回しを彷彿とさせ。
 描かれるシーンはスクリーンに映し出されるように鮮やかで。
 登場人物達が心を通わせるシーンは最高にドラマティック。
 作中に出されるゲームや歌詞といった小道具は、現実世界への敬意を匂い立つほどに含んでいる。

 そしてなにより素晴らしいのは、王道を踏まえつつ登場人物の心の機微を炙り出すために用意された最高のストーリー。
 軽い気持ちで映画見に行ったら、今年一番の傑作を見せられたようなそんな気分ですよ、今、僕は。

 思うに、深い失意の底にある少女を、ちょっと間の抜けた陽気な太っちょの男が、はげましてレディへと導くというのは、名作映画のシナリオとしてありそうなものではないでしょうか。
 それがちょっと、日本のオタクだっただけで。

 そう思うともうね、本当にデイブというキャラクターが愛おしい。
 被ったダンボールを突き破って、自分の大切なレディのために、踊ってくれるこの愉快な男を、どうしてただのキモオタ・デブオタと切って捨てられようか。

 これで映画を一本取るべきだよ。
 誰か舞台化するべきだよ。
 映像化したモノを僕はみたいよ。

 これは間違いなく傑作。
 カクヨムに居ながら、一年近く読まなかったことを激しく後悔する作品でした。超オススメです。

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