運搬

"おひるね"達のチームは、密かに新技術の開発を始めた。それは円形煉瓦と寒い方向産の植物を組み合わせたもので、なんと食料や暖房用の燃料を載せたまま移動できるのだった。"おひるね"は寒い方向を冒険する古いおとぎ話に倣って、これを松明号と名付けた。

「"はやくち"、食料だけならどれくらい積めそうかしら?」

「そっスね。4頭で旅すんなら10週分くらいイケそス」

「"とびはね"、圧縮燃料は用意できた?」

「りょーかいですっ。食料1週分のスペースもくれたら、寒さには当分困らないはずですよ!」

「"のんびり"、松明号を引っ張るこつは掴んだ?」

「ええ、ええ。ま……半週もくれりゃー。地平の先まで行ってやりますよう」

「どうやらすっかり準備が出来たようね。それじゃ、行くわよ!」

4頭は新天地を求めて旅立った。すなわち巣穴のない方向、寒い方向へ出発したのである。


2週も過ぎた頃には、《赤さ》は完全に顔を出さなくなった。植物が繁茂する領域に到達すると、一行はそれらを丁寧に切り倒し、食料と燃料に加工した。十分な蓄財が済むと、彼らは更に先へと進んだのである。

進行につれて寒さは厳しさを増したが、堅実な彼らは燃料を多く焚くことで対応した。こうして歩みは遅くとも、4頭は着実に寒い方向に進んでいった。しかし、寒極……最も寒い場所……に辿り着くには至らなかった。あるところから植物は極めて強靭になり、しならせることすら困難だったからである。そして残念極まりないことに……この辺境ですら、樹を伐り倒した形跡があった!  それは一行が新天地を見つけるに至らなかったことを意味した。

しかし"おひるね"は諦めなかった。

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