暴かれた秘密!!

 この日もカンキョハカーイの機害獣を撃破した桜花達。

「今回も楽勝だったな~」

「…ブツブツ…私居なくていいかも…ブツブツ…」

「メッタメタに壊して気持ち良かったのら」

「何故私は攻撃に参加してはいけないんですの?」

「5対1がこんなに楽なんて、考えるまでもありませんでしたわ。オーッホッホ!!」

 快勝したラフレシアン達は気が緩んでいた。一瞬光った光の事など気が付かない程に。

「そう言えば、皆さんから言われた通り、男の子をとっかえひっかえするの止めたらハブられなくなりましたわ」

「オメー尻軽だからな…せめて外ヅラはフレンドリーにしていろよな」

 桜花達は梅雨はただ愛嬌の良い女の子と周りに触れ回ったので、尻軽じゃなくて断り切れなかった女の子だと誤解させてハブを解かせたのだ。

 これは当然自分達の為でもある。「あんなクズ女と友達」と、周りに思わせない為の高等戦術だったのだ。

「私なんて行きたくもない保健室にいつも行ってるんですの」

 白雪は周りを巻き込まないよう、保健室に半隔離されていた。

 おかげで保健室は白雪専用になり、桜花達のたまり場になってしまったのだ。

 

 変身を解き、授業に戻る桜花達。全員バラバラのクラスだ。

 梅雨も自分の教室に戻る。

「獅子堂さん!大丈夫だった?」

「はぐれたから心配だったよ!!」

 近寄り難い桜花達と違い、誰にでも愛想を振り撒いていた梅雨は、意外と人気者になっていた。

「平気ですわ。ご心配ありがとう」

 お嬢様口調なのに愛想がいい。人気が出るのも当然だった。

 そんな梅雨に一人の少女が近寄る。

「獅子堂さん。ちょっといいかなぁ?」

 新聞部の新谷紙子あらやかみこだった。あだ名はニュースペイパー。

「宜しいですわ。何でしょう?」

「ここじゃなんだから…」

 紙子は二人きりで話をしたいようだ。梅雨はそれに応じ、紙子の後を付いて行く。

「部室でいい?私一人しかいないから話は漏れないし」

「どこでもよろしいですわ」

 梅雨は新聞部部室に入っていった。

 椅子に座り、クルクルと回っている梅雨は切り出す。このアホっぽさも愛嬌との評価も戴いている。愛嬌を振り撒けとのアドバイスに従って得た評価だと梅雨は思っているが、椅子に座ってクルクル回るのは愛嬌じゃない。

「話って何でしょう?ん?」

 梅雨の前に差し出された一枚の写真…それは機害獣を撃破し、意気揚々と引き揚げている途中の写真だった。

 一瞬心臓が止まりかけたが、そこは外ヅララフレシアン。冷静を装って紙子の方を見る。

「駆け引きとか面倒だから単刀直入に聞くけど、獅子堂さんって、この変身少女でしょ?」

 ドンガラガッシャン!!

 梅雨は椅子から転げ落ちた。やはり冷静じゃいられなかったのだ。

「ななななな!なにをいきなり?」

 動揺しまくりの梅雨。

「獅子堂さんだけじゃないよね?神宮寺さん、来栖川さん、三千院さん、天乃橋さん…全員そうでしょ?」

「違う違う違う違う違う違う違う!無い無い無い無い!!」

 全力で否定する梅雨。否定するしか無いのだが、必死過ぎてどうしようもない。

「やっぱりバレたらヤバいんだ?ねぇ、もし、獅子堂さんがちゃんと認めてくれたら、獅子堂さんの事は絶対言わないと言ったら…どうする?」

 認めたら自分だけは助かるのか!!かなり揺れる梅雨…それを見切って畳み掛ける紙子。

「別に獅子堂さんから情報引っ張ろうって訳じゃないの。私はただ知りたいだけ」

 紙子は梅雨の手を握った。

 カサッ

 手の中に紙の手触りを感じる。恐る恐る手のひらを見ると…1000円が収まっていた。

 それを今世紀最大の握力を使用し、固く握り固めて声高々に言う。

「そうよ!!良く解ったわね!!私がラフレシアン レイニーシーズンよ!!オーッホッホ!!」

 梅雨は1000円で仲間を売ったのだ。躊躇いなど微塵も無く…

 紙子は梅雨を解放した。怪しく笑い、手を振りながら…そして梅雨の気配が無くなった頃、ボソッと呟く。

「次は天乃橋 白雪にするかな~…クックック…」


 満足そうに携帯のムービーを見る。

『そうよ!!良く解ったわね!!私がラフレシアン レイニーシーズンよ!!オーッホッホ!!』

 残念ながら動画は撮れなかったが、梅雨の音声はバッチリ録れていた。

「1000円で口を割るなんて、やはりお嬢様キャラなだけなのね。外見はギャルしてるけど…そのギャップがいいのかもね。どうでもいいけど…クックック…スクープよ…美少女軍団の正体が殺人的な匂いを発しているヒロインなんて。あれってラフレシアンって名前だったんだ。名前からして臭そうだよね」

 紙子は以前梅雨が転校して来た日、男をとっかえひっかえし、女子派閥をとっかえひっかえした時に例の笑い声『オーッホッホ』を梅雨の口から聞いた事があった。

 そう言えば、と緑の変身少女が『オーッホッホ』と笑っていたのに気が付いたのだ。

「獅子堂 梅雨がツルんでいるのはあの四人…ラフレシアンってのと数が同じ…と言う事はですよ!!」

 紙子は保健室に足早に向かった。天乃橋 白雪に会う為にだ。勿論聞いても正直に答えてはくれないだろうが、何かしらの失言があったのなら…との期待を込めて。

 そして保健室に入った紙子。目当ての白雪は保健室のベッドに寝ていた。

 体育の授業で顔面にバレーボールがヒットし、気絶したとの事。情報の裏付けは取れた事になる。

 だが、身体が弱いと言う話の白雪を起こして話を聞き出すのは流石に良心が咎める。

「天乃橋さん、天乃橋さん」

 筈が無かった。本当に病弱だろうが目の御前のスクープの前には霞んでしまう。

 ベッドに横になっている白雪を揺り起こす。何度も何度も。

 そして、白雪は目を開けた。

「あ…どこか具合悪いのですか?ベッド占領してごめんなさい…ああっ…」

 起きた白雪は、貧血を起こしたように倒れた。

「あ、ご、ごめんなさい。私は大丈夫だから、そのまま寝てて」

 流石に目の前で倒れられたら気を遣わない訳にはいかない。紙子は慌てて白雪を寝かせた。

 そしてじっと白雪の顔を見る……こんな顔色の悪い人に話を訊く事なんか出来ない。 ラフレシアンならともかく、本当に身体が弱いのならシャレにならない。

「ごめんなさい…あなたが休む場所を取る事になってしまって…」

「ううん。私は大したことないから大丈夫。ゴメンね起こしちゃって。ゆっくり寝てね。」

 そう言って足早に保健室から撤収する紙子。本当のジャーナリストならスクープよりも気遣いだと自分に言い聞かせながら。

「ふ~…三千院 紅葉から当たるか」

 紙子は美術室に向かった。そして美術室の前で紅葉を捜す。

「あれ?新谷さんじゃん?どしたの?」

 以前取材された事がある美術部、今度もまた取材だろうか、と思っていた美術部員は、愛想笑いをしながら紙子に話かけた。

「あ、三千院さんにお話を聞きたくてねー」

 キョロキョロしなから紅葉を捜す紙子に、美術部員がご丁寧に居場所を教えた。

「紅葉ちゃんは隣の美術倉庫だよ。だけど倉庫には紅葉ちゃん以外誰も入れないよ」

 その密室状態の部屋で何をやっているのか俄然興味が湧き、瞳を爛々と輝かせた。

「あ、でも、この頃は神宮寺さんとかが入っているな~。うらやましい!」

 美術部員はホゥっと溜め息をついた。

「し、神宮寺さんと来栖川さんと天乃橋さんと獅子堂さんじゃない?」

 いきなり詰め寄られた美術部員は驚いて下がりながらも肯定した。

「た、確かにそうだけど。な、なんで?」

 紙子の仮説が確信に変わった。

 やはり美少女軍団が臭いコスプレ戦士、ラフレシアンなのだという事に!!

 紙子は小躍りで美術室から去った。それを唖然と見送る美術部員。

「後は何とか尻尾を掴むだけよっ!」

 珊瑚が練習しているであろう体育館に小躍りしながら向かう。

 何か粗でもあれば…と、凄い悪い顔を拵えて…

 その紙子と美術部員の話をひっそりと聞いていた紅葉。

(怪しいのら…なんかキナ臭いのら…)

 紅葉はスマホを取り出し、電話をした。

『はいよぅ~』

 電話の相手は桜花だ。

「新聞部の新谷が何か嗅ぎ回ってるのら。なんかオカシイのら」

『新谷か。さっき保健室に来たらしいぜ。白雪が言ってた。あいつ、具合悪い振りしておっ払ったんだとよ!ギャハハハハ!!』

 桜花が愉快そうに笑う。

「笑ってる場合じゃないのら!!ラフレシアンが私達だとバレたら…」

 あの臭い女の子が自分達と知れたら一大事だ。

 そうでなくとも自分達はラフレシアンでは猫を被っていないのだ。あの猟奇な自分が世間にバレるのは避けたい。是が非でも。

『だな。じゃ、何とかしてみるか』

 そう言って桜花は電話を切った。


 一方、体育館で紙子に捕まった珊瑚。次の大会の取材だと言われれば断る訳にはいかない。表の顔全開でインタビューに臨んでいた。

「来栖川さん絶好調ですね!」

「何とか調子をキープして、大会では優勝目指しますよ!!」

 普通に取材を受けていた珊瑚。まあ、手慣れたものだ。本当は放っておいて欲しいのだが。

 不意に紙子が口を開く。

「絶好調は新体操の事じゃないですよ。怪物を倒している事ですよ!確か負け無しですよね?」

 一瞬動揺を見せる珊瑚。それを見逃す筈も無い紙子。

「大丈夫、私しか知りませんから。来栖川さん達がラフレシアンだって事はね…」

 瞳がキランと光る!

「ラフレシアン?ああ、あの怪物を倒してる女の子達?アハハ!!あんな凄い女の子に間違われて光栄だわ!!」

 爽やかに笑う珊瑚だが、内心はドキドキしまくりだった。

「あの青いラフレシアンが来栖川さんなんでしょ?あんなスタイルいい女の子、来栖川さん以外にいないですよ~」

 珊瑚がピクリと反応する。その様子に畳み込めるか?と思った紙子だが…

「来栖川先輩~!!そろそろ練習しろってコーチがぁ~!!」

「ごめんね!今追い込み中だから」

 ホッとして珊瑚は練習に戻って行った。ボロを出さない自信はあるが、突っ込まれたくは無い。元々自分は他人と関わりを持ちたくないのだ。

 逆に上子は内心舌打ちをして手を振って見送る。

 惜しかった。あのまま捲し立てれば何かしらの粗が出ていたかもしれないのに。と。

 しかし、まだ神宮寺が残っている。来栖川には上手く逃げられたが、神宮寺 桜花は絶対に逃がさない!!

 紙子は意気揚々と桜花を捜す。

 

 教室で聞いてみると、桜花は屋上に行ったとの事。

 当然紙子は屋上に向かった。

 屋上に到着し、鉄製の扉を開ける紙子。

 神宮寺は直ぐに見つかった。

 フェンスから校庭を見て風を浴びて気持ち良さげに微笑んでいる。

「神宮寺さ…」

 声をかけようとした紙子だが、凄まじい悪寒を感じ、肩にかけようとした手を止めた。

(な、何この子?このプレッシャーは?)

 桜花はゆっくり…ゆっくりと振り返る……

(怖い!!怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!何よコレ!?)

 油汗がダラダラと流れ出る!!

「あら?確か新聞部の新谷さん?」

 ニコッと笑う桜花!

 ゾワワワワワッ!!!

 紙子の全身が泡立った。

 全ての男子を魅了し、幌幌高校はおろか、他高にもファンクラブがあると言う、天使の如くの微笑みが自分に向けられていると言うのに、感じるのは恐怖しかなかったのだ。

 しかし新聞部としてスクープ命の紙子は、生唾を飲み込んで桜花に質問をする。

「し、神宮寺さん…は…ラフレシアン…なの?」

 絞り出すように言った一言に桜花はやはり微笑んで答える。

「だから、何?」

 認めた!認めた!しかし喜びよりも恐怖が勝っているのは何故だろうか?

「認めたね神宮寺さん…はっ!?」

 いつしか紙子の後ろには、珊瑚、紅葉、白雪、そしてロープで縛られ、猿轡を噛まされて唸っている梅雨がいた。

「な、何よアンタ達?」

 後退る紙子。

 ドン

 何かに当たってそれ以上は下がれない。

 恐る恐る振り向く…

「ひいいっ!!」

 当たったのは桜花だった。凄い冷たい目で紙子を見下ろしている。

「…よく解ったな。ってか、目の付けどころが良かった。梅雨を買収したんだよな…」

 紙子は固まったまま動けない!!握り固められた桜花の拳が見えているにも係わらず、動けない!!

「記憶を失えぇぇぇぇええあああああ!!!」

 桜花は紙子のボディに本気で拳をぶち込んだ。

「ぐふあああああああああああああああ!!?」

 紙子は白目を向き、膝を付き、そのまま前のめりになってぶっ倒れた。

 桜花は一つ息を吐き、梅雨に目を向ける。

「…よし、梅雨、こっち来い」

 梅雨はオドオドと桜花の前に歩く。

 桜花は速攻で梅雨のほっぺたをギッチリ掴み、引っ張り上げた。

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」

「テメェ1000円で私達を売りやがったみたいだなクズ!!」

「いや、ほんの出来心…キャー!!もう引っ張らないくださいー!!」

 ブンと梅雨を白雪の傍に投げ飛ばす。

「白雪、梅雨を保健室に連れてけ。珊瑚に説教させな」

「解ったですの」

 白雪は梅雨を引きずって、珊瑚と一緒に屋上から出て行った。

「珊瑚に説教させるとは、桜花は悪魔なのら」

「珊瑚にかかっちゃ、私も謝るしかなかったからなー」

 どうやら珊瑚の説教はとても恐ろしいものらしい。

 あの桜花が恐れているのだ。想像に難しくない。

「で、新谷をどうするのら?」

「バケツに水汲んであんだろ。ぶっ掛けて起こせ」

 紅葉は言われた通り、紙子にバケツの水をぶっかけて気絶から覚醒させた。

「ぶわあああっ!」

 気絶から覚めた紙子に、桜花は優しくニッコリ微笑む。

「ラフレシアンは誰?」

「し、神宮寺さん自分で認めた…ぐぎゃあああ!!」

 桜花は延髄に思いっ切りチョップをお見舞いさせて、再び気絶させた。

 そして再び紅葉がバケツの水をぶっかけて覚醒させる。

「おはよう新谷さん。ラフレシアンは誰かな?」

 優しく微笑む桜花。

「だから神宮寺さんが認めた…はううっ!!」

「っかしいなぁ…まだ記憶飛ばねーのか」

 手をボキボキ鳴らしながら、またまたぶっ叩くつもりだった。と言うよりも記憶を失うまで続けるつもりだ。

「ラフレシアンは誰か解りません!記憶飛んじゃったから!!」

 ガタガタ震えている紙子。桜花と紅葉は見つめ合って頷き、紙子から携帯を没収し、動画を全て削除した。

「風邪を引く前に、お家に帰った方がいいわよ」

 ニッコリ微笑む桜花にウンウン頷き、紙子は屋上からダッシュして逃げ出した。

「記憶が無くなり、トラウマが産まれたのら。クシシシ!!」

「梅雨は珊瑚に任せりゃ大丈夫だろ。お好み焼き食って帰ろうぜ」

 桜花と紅葉も屋上から立ち去った。


 一方保健室では、梅雨が正座し、珊瑚に説教を喰らっていた。

「…ブツブツ…私を陥れて楽しんで…ブツブツ…良かったね…ブツブツ…私は全く楽しく…ブツブツ…いや、私如きの事なんて頭に1ミクロンも無かったんだよね…ブツブツ…私みたいな汚物…ブツブツ…いえ、汚物に申し訳ないわ…ブツブツ…」

 責められているのか、卑下しているのか解らないが、梅雨の気持ちが段々とズーンとしてくる。

「…ブツブツ…ラフレシアンなんてやりたく無かった私だけど…ブツブツ…ああ、梅雨はやりたかったのか…ブツブツ…だから私の事なんかどうでも良かったんだわ…ブツブツ…私を亡き者にして鼻で笑うのが至上の喜びなんだわ…ブツブツ…梅雨が羨ましいわ…ブツブツ…私なんてウンコ…ブツブツ…梅雨みたいに明るく振る舞えないし…ブツブツ…ああ、ウンコは下水に流されるのがお似合いとか思っているのね…ブツブツ…」

 こんな調子で三時間もクドクド言われた梅雨。だんだん死にたくなってくる…

「ごめんなさい!もう絶対にしないから!」

 半泣きしながら訴えるも、無駄だった。何故ならば…

「…ブツブツ…絶対って言葉は私は信じない…ブツブツ…人間絶対死ぬっていう絶対以外は…ブツブツ…ああ、梅雨は絶対しないって言っているのね…ブツブツ…ごめんなさい…ブツブツ…私否定しちゃった…ブツブツ…私今から海に身を投げるわ…ブツブツ…それで許してくれる?…ブツブツ…」

 こんな調子でダイレクトにネガティブオーラをぶつけられるのだから。

「私の方が悪いのにぃ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

 もう梅雨の自我崩壊寸前まで追い込まれていた。

「これが桜花や紅葉が恐れている『珊瑚の本気の説教』ですの…」

 白雪は絶対に珊瑚だけは怒らせないようにしようと心に誓った。

 段々と壊れてきている梅雨を気の毒そうに眺めながら……


 次の日、桜花は登校中、新谷 紙子の後ろ姿を発見し、近寄った。

 背後から紙子の肩をポンと叩くと、紙子が振り向いた。

「おはよう新谷さん」

「し、しししし神宮寺さんんんんっ!?」

 紙子はあからさまに脅えを見せた。

「どうしたの?記憶無くなったんじゃなかった?」

 優しく微笑みを見せるも、紙子には悪魔の笑みとしか受け取れなかった。

「記憶なんて無い無い無い無い無い!!わ、私急ぐから!!じゃあね!!」

 紙子は鞄を抱きながらダッシュで桜花から離れて行った。

「あいつは大丈夫だなぁ」

 ニヤリと笑う桜花。そんな桜花を白雪が発見し、声をかけた。

「おはよう桜花」

「あ、おはよう白雪」

 儚げな笑顔を桜花に見せながら小声で話す。

「…珊瑚の説教で梅雨は壊れる寸前でしたわ…」

「…だろ?あれは私も謝るしか無かったからよぅ…」

「何にせよ、梅雨は大丈夫よ…」

 外ヅラモードで切り返す白雪。そろそろ他人の目が多くなってきたからだ。

「そうね。じゃ、学校に言ってみんなとお話しましょう」

 桜花と白雪は談笑しながら学校に向かった。

「…あ」

 白雪がコケそうになるのを桜花が助ける。

「大丈夫?」

「うん…ありがとう桜花…」

 とか言いながら途中何度もコケそうになる白雪。それを何度も助けながら桜花は思った。

 梅雨といい、白雪といい全く戦力外な連中をどう使おうか、と。

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