第11話 再びフリーター時代(祖父の家に居候)



C男と別れ、家を出なければならなくなっても、私は八方塞がりだった。

すぐに一人暮らしできる貯蓄はない。

かと言って、実家はゴミ屋敷だから猫と暮らすには不安過ぎる。

ゴキのトラウマもあるし、帰りたくない。

でも、このままここに居たらもっとダメになってしまう。

思考がループし続けていた。


両親か妹か忘れたが、おじいちゃんの家はどうか、と言われた。

別れ話の前年に祖母が亡くなっており、

祖父は一軒家で一人暮らしをしていた。

祖父と祖母の言い争いも何度か目の当たりにしていたので、

金銭的な援助は受けつつも、物心ついてからは少し苦手に思っていた。

老年の言い争いなんて日常茶飯事なのかも知れないが、

いかんせん両親のこともあり、敏感になっていた。

ただ、私はどちらかというと世間体を気にする祖母の方が苦手で、

祖父とは小さい頃に一緒にお菓子を作ったりスキーを教えてもらったりと、

祖母と言い争いさえしなければ割と仲良くできるタイプの人だった。


祖父は人に強く干渉されたくないし、しない人だった。

そこが祖母と合わなかったのかも知れないが、

祖母は晩年ほとんど眼が見えなくなっており、

階段から落ちて入院→自宅療養→病状悪化し再度入院、

そして亡くなるまで、祖父は祖母の面倒を見続けた。

愛はなくなっていたかも知れないけど、情はあった。

祖父は最後まで祖母の傍にいた。


話が逸れたが、祖父も一軒家に一人暮らしで、寂しさを感じているかも知れない。

祖父の家はキレイだし、部屋も余っている。

条件としては、この上なかったが、踏ん切りがつかなかった。

ある日、2つ目の声優学校で仲良くなった女友達に、状況を話した。

自傷してしまうことも、軽く話した。

そして、早く別れた方がいい、おじいちゃんの家いいじゃん!と、

祖父の家に行くメリットを次々に挙げてくれた。

それでようやく決心することができ、C男と約1年住んだ家から、

猫2匹と祖父の家に転がり込んだ。


祖父の家は2階建てで、私は2階の和室を使わせてもらう事になった。

まだお菓子作りのバイトは辞めていなかったので、

バイトに行っている間、猫は私の部屋に入れて出られないようにしていた。

祖父は動物を飼ったことがなく、好きでも嫌いでもなかったが、

何かあったときに対処できないだろうと思ったからだ。

しかし、部屋に閉じ込められているのがストレスだったのか、

猫が粗相をするようになり始める。

新しく買った座椅子、畳。これは困った。

フローリングなら拭けば済むが、布や畳は吸い込んでしまう。


C男は、私の様子が気になり、一度祖父の家に来た。

が、別れたのに、しかもお金がないからと、なんと私の部屋でセックスをした。

応じた私も駄目だが、寂しさに負けた。一瞬でも満たされたかった。

だが、それがきっかけで、C男から気持ちは離れていった。


2つ目の声優学校で知り合いになった男性の連絡先が残っていて、

連絡をして飲みに行った。

そいつは、実は結婚してるんだ、と飲みの席で言ってきた。

最初に言えよ。でも、時すでに遅し。

不倫なんて絶対に無理だと思っていた私だが、とにかく人恋しかった。

気持ちが入ってしまったらダメだ、早く別の人を見つけないと、と焦った。

もうドロドロの恋愛なんてまっぴらだった。


そんな時。

以前から私を知っていた、C男のバンドメンバーの一人に偶然見かけられ、

「〇〇にいた?」というだけの連絡から、私が飲みに誘い、会う事になった。

当時、そんな話すこともなかったが、C男と私の両方を知っている人で話しやすく、

付き合って別れるまで、そして直近の結婚ヤローまでの経緯を話しつくした。

その人は9歳ほど年上で、会社員をやりながらバンドに参加していた。

音楽で食っていくのは諦めているが、ずっとバンドはやりたかったらしい。


当時は、とにかく大人だなぁ、と思った。

私とC男との事も、バカにはせず、でも実はたいしたことないよ、と、

諭すように話を聞いてくれた。会社には浮気も不倫も溢れかえってるよ、と。

その人(以下D男)も、4~5年付き合った彼女と別れ、一人で暮らしていた。

そしてあっさり、そういう関係になった。


さすがにC男の事は気にしていた。

バンドにも関わる事だから、しばらく秘密にしておこう、という話になった。

が、私が別のバンドメンバーに話してしまい(その男性とも2人で飲んだ←)

その人からC男に知れるのは一番まずい、という話になり、

D男からC男にカミングアウトする流れになった。

なんで話したのかは、私も当時の自分がよく分からない。

その人も私に多少気があるんだろうな、と思っていたから、

それを止めようとしたのかも知れない。だからといって言う必要はないが。


そしてD男からカミングアウトされたC男から、私にクレーム電話が入った(笑)

音楽関係の人間には手を出すなとあれほど言ったのに、

よりによってバンドメンバーに手を出すなんて、と大層おかんむり。

言わんとすることは分かるが、別れているのに、

なんで一方的にあれこれ言われなければならないのか不思議だった。

ただ、これでもうD男との関係も終わりだと勝手に思い込み、

泣きまくり「もういい」「諦める」「どうでもいい」と連呼したところ、

なぜかC男が冷静になり、結果、D男との付き合いを認める、という事になった。

意外だったが、それで落ち着くならいいと、礼を述べた。


後から、C男は既に別の女と付き合い始めていたことを知り、

私が激昂することになる。なんでそっちはさっさと新しい相手を作ってるのに、

私は散々文句を言われなければならなかったのか、と。

しかも、その相手の女は私の顔見知りだった。

やっぱりメンがヘラった子で、放っておけなくなったらしい。

私と付き合っていた頃も話題にしていて、嫌だった思い出の相手だ。

今思うと、C男はほんとにメンがヘラる子ばかり引き寄せてるなぁ、と思う。

もしくは、C男が女をそうしてしまうタイプの性格なのもかも知れない。

自尊心が高く、高圧的。はじめは優しいが、徐々に本性が出てくる。

あ、別れて良かったわ、私←

でも当時は、物凄く悔しかったし苦しかった。私より、か弱く若く可愛い子。

卑屈が大爆発していた。

D男と付き合い始め、バンドのライブで顔を合わせることもあり、

そのたびに心が苦しくなっていた。

まぁ、後にC男とその新彼女も別れるんだが。


またもや脱線したけど、とにかくD男とはC男公認で付き合える事になった。

C男は既に新彼女と別の家で同棲しており、羨ましさプラス、

私は祖父の家からD男の家に通う(片道2時間)日々に疲れていて、

やっぱりD男に同棲を提案した。

お金もないし、そうそう良い物件はない、と諭されていたが、

物件を見つけ出し、お金も親に借りるという暴挙に出て←

D男と同棲生活を始める。






が、やっぱり1年で破たんすることになる。懲りないな、私。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る