第9話 フリーター時代3(恋愛ドロドロ)



実家に帰ったはいいものの、環境は相変わらず最悪だった。

家は汚いし、両親もほぼ一日中、家にいる。

私はほぼ使われていなかった一部屋を片付け、

せめて自分のテリトリーだけはキレイに保とうと心掛けた。

が、そこは一軒家。一部屋だけ片付いていても、ダメなのだ。

夜、カサカサという音がする。そう、ゴキだ。

私はとにもかくにも、ゴキが苦手だ。書くのも嫌だ。

ベッドに横になり、静寂の中、カサカサと音がする。

一度、ベッドに乗ってきたこともある。絶叫した。

ホイホイを置いても、そこに居る、と思うだけで無理だった。

やはり実家にいるのは苦痛だった。


そんな心境を吐き出す場所が欲しくて、

当時流行っていたmixiに日記として投稿していた。

すると、サポートギターを頼んだ男性(以下C男)が、コメントをくれた。

私には、同年代の友達がほぼいなかった。C男は1つ年上だった。

誰かに話したい。聞いてもらいたい。

その思いが強くなり、C男を飲みに誘い、話を聞いてもらった。

C男は、私を否定するような言葉は言わず、常に肯定してくれた。

心地よかった。誰かに、分かって欲しかった。

受け止めてもらいたかった。それが叶った。


C男には、7年ほど付き合い続けている彼女がいた。

高校生の頃からの付き合いだが、お互い実家で、

C男は音楽で成功したい、彼女は結婚したいと、考えが食い違い始めていた。

そんなところに、私が入り込んだ。

私も彼氏と別れ寂しいところに、彼女との関係が重くなり始めていたC男が現れた。

ただの友達から、そういう関係になるのは、時間の問題だった。


私は最初、付き合いたいとハッキリ言ったわけではなかった。

ただ、C男は車持ちで、私の実家に(遠いっちゃ遠いが)来れない距離じゃなく、

頻繁に会うようになった。

私は当時セックスが好きだったし、会うたびにした。

それが、C男には意外だったようだ。

彼女としか経験がないし、彼女はそんなにセックスが好きではないらしい。

私はC男と会えて、そういう事できればいいや、と思っていたが、

さすがにずっと会っていたからか、徐々に気持ちも惹かれていった。

C男は彼女と別れようか悩んでいるようだった。

彼女の方も、いつもの喧嘩や別れ話と違うと、何かを察し始めていたらしい。

私はハッキリしないのがイヤで、モヤモヤしていた。

ある日、C男に「私が他の男性のところ行ったらどうする?」と聞き、

その返答が「あー・・・まあ、仕方ないかな」だったので、

何かがプツンと切れた。


C男の音楽仲間の男性と会い、飲んだ。

その男性が女好きなことも知っていた。

手を出されてもいいや、と、家に着いていった。

が、何を思ったか、そこでC男に連絡を取った。

C男はめちゃくちゃ動揺していた。

どういう状況か説明し、C男は激昂した。

C男とのやり取りに疲れたが未練もあり、別の男に手は出されたくないと思った。

私はその男性に事情を説明したが「関係なくない?」と一蹴された。

「どういう理由で俺と会ったかは分かったけど、それとこれは別でしょ」と、

私の気持ちは関係なく、ヤる気満々だった。

私はその気にさせたのを謝り続け、とにかくするのは許してくれ、と頼み込み、

結局、手で済ませた。これも黒歴史だな。


その翌日C男と会ったが、私は前日の事もあり男というものに失望していて、

正直どうにでもなれ状態だった。どいつもこいつもヤりたいだけか、と。

C男も彼女との関係をハッキリしないし、

私が別のところに行ってもいいと言ったからだ、と開き直った。

向こうは意表を突かれたようだった。

俺も悪かったけど、俺の知り合いに手を出すのはやめてくれ、と言われた。

彼女とは別れる、と。


しかし、そこからも相当にやばかった。

ようするに略奪愛になるのだけど、7年付き合った重さは半端なかった。

もともと結婚願望もあるくらい恋愛体質の彼女だった為、

倦怠期感はあったものの、いきなりガチの別れを告げられて、困惑したらしい。

最終的にはC男の実家に顔を出したり、飛び降りまがいの事をしたりと、

ほとんど精神を病むところまでいってしまった。


しかし同時に、私も病み始めていた。


C男も私も実家で、お互いにお金もない。

C男がでかい車に乗っていたので、車中泊をしまくった。

しかし、車中泊も甘くない。

相手は腰を痛めるし、私もC男のバンドのリハーサルについていき、

駐車場の車の中で数時間過ごすなど、無茶なことを続けていた。

とにかく、一緒に居ないと不安だった。


両親と妹にC男との事が知られ、予想通りだったが、めちゃくちゃ叱責された。

今度はC男と実家に呼び出され、汚い我が家で延々説教された。

私はもう色々諦めていて、親の言葉にはシャッターをおろすようになっていた。

聞いてはいるけど、何も頭には入ってこない。

C男は、B男と同じく諦めるかと思いきや、逆に私を放っておけなくなったらしい。

親にあそこまでこき下ろされて可哀相だ、と。(ビッチだとか思いやりがないとか)

それでも行く場所はないので実家に帰ったが、

C男と彼女のことが気になって、不安でおかしくなりそうだった。


そこで初めて、リストカットをした。


自分でも驚くくらい、ぐちゃぐちゃだった心がスーっと軽くなった。

C男は戸惑っていたが、早く彼女と別れなければ、と思ったようだ。

結局、最後まで私との事は伏せたまま、彼女側が根負けし、別れた。

知られていたのかも分からないが、彼女も限界だったのだと思う。

C男は最後まで彼女のことを「重い」と言っていた。






後に私が彼女をはるかに上回る重さになるなど、その時は知る由もない。





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