第7話 フリーター時代1(ダンスグループに入る



しんどい舞台をやっていた間も、B男とは付き合っていた。

B男は事務所の養成所のようなところに通っていた。

そこは男性声優が立ち上げている事務所で、こじんまりとしていた。

一時期は有名作品にも多く出ていたようだが、私は知らなかった。

舞台の後、やることがなくなった私は、

一般人も受けられるワークショップに参加するようになった。

ただ、その男性声優も酒好き女好きのおじさん、という少し苦手なタイプで、

あまり深く関わりたくないと思っていた。


しばらく後、とあるきっかけでアマチュアのダンスグループに入った。

まだ18歳そこそこの男の子が主催していて、

夜の新宿に集まってはビルの窓を鏡代わりに、みんなで練習していた。

私は専門学校で少し習った程度しかダンスをやっていなかったが、

他にもダンス素人は何人かいたので、肩身が狭くなることはなかった。

主催の男の子はめちゃくちゃ踊れるし身体能力も高いが、

ややアル中なところがある(その子も過去に色々あったらしい)子で、

ダンス練習が終わった後は、その子の家に集まって夜通し飲んでいた。

来るもの拒まずで、その子の周りにはいつも誰かがいた。

人を惹きつける子だった。家庭に事情があったりなかったり、

過去に何かあったりなかったり、色んな子がいた。

たいがいは高校生くらいで、私は年長組だったが、あまり気にしなかった。


その男の子が自分でイベントを企画したり、

あるいはイベントに参加するから一緒にやろう、と誘ってくれて、

何度かダンスイベントや、ダンスをやる見世物に参加したりした。

それは、とっても楽しかった。

荒んでいた気持ちが、緩んでいった。

何かを表現したい、という欲求も満たせた。


だんだん人も入れ替わり、その男の子も引っ越しだったりなんだりで、

ダンスグループは自然消滅、徐々に関係は疎遠になってしまった。

声優のワークショップも、行かなくなっていた。

歌うのが好きだったので、ボイストレーニングだけ通っていた。






そして遂に、B男と別れる日が訪れる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る