第5話 専門学校(ちゃんと行ったよ)時代



18歳になり、いよいよ自分の行く末を案じ始めた。


絵を描くのが好きだという単純な理由で、

美術大学に入りたいなーと一時期考えたものの、

大学の入学試験を受けるには高校卒業資格がいると知り、早々に断念。


両親にはお金がなかったが、再婚した父の祖父、祖母が元共働きで、

それなりにお金を持っていたらしい。その為、学費を出してくれると言われていた。

大学なりなんなり、やりたいことがあるなら援助するよ、と。


その好意にすがって、声優の専門学校に入学することにした。


アニメやゲームで、声の演技に感動していた。

自分もやりたいと思った。理由はそれだけだった。

小学校~高校のように、好きも嫌いも関係なく学ぶより、

好きなことを集中して学びたかった。


専門学校時代には、本当に色々あった。

私の唯一の青春かも知れない。

大勢の他人と同じ授業を受けたり、課題をこなすなんて小学生以来、

文化祭や修学旅行(実費で任意参加だが)も初めての経験だった。

私にとって、声優の専門学校に入ったのは正解だったと思う。

もしそこで役者の勉強をしていなかったら、もっとコミュ障だったと思う。

年齢も違う、個性の強い同期。勉強が出来るかどうかなんて、関係なかった。

多少なりとも自分の殻をやぶったり、色んな人と頻繁に接する機会ができたこと。

オーディションで自己PRをしたりと、引きこもっていたら絶対にしなかったことが

たくさん経験できた。自分に少しは自信もついた。


青春と言えば、恋愛でのあれこれも色々あった。

小学校以来の、異性との接触である。

とりあえず、最初に付き合った相手は、完全に”若気の至り”だった。

ようするに、ヤりたかっただけ←

今までネットの世界で繰り広げられていたあんなことやこんなこと(死語)を、

自分も経験できるんだ!してみたい!と思った。

その時点で、好きとか嫌いとか、そもそも恋愛じゃなかったな、と思う。


同級生の中で、たまたま近くにいたのが、その男(A男としよう)だった。

クラス内で自然とグループができ始め、その中のひとつに私もA男も入っていた。

授業後に遊んだり飲んだり、グループ内の誰かの家に皆で泊まったりしていた。

言ってしまえば私は「誘い受け」を駆使した。

分かりやすく近くで寝たり、向こうが手を出しやすいようにした。

あれだ、隙を作る、というやつ。

まんまと乗ってきた相手と、した。もちろん、友人宅ではないが。

バージンは大切に、なんて考えは毛頭なかった。

この時点で私の貞操観念はだいぶアレだという事が分かるけれど、

10代後半女子の行動としては別段驚かれることでもないのだろうと思う。

ただ、アオカンとか相当にリスキーな事もしていたので、完全に黒歴史。

穴があったら入りたい。消し去れるものなら消し去りたい過去ナンバーワン。


A男とは、クリスマスに別れた。

ゲームセンターで取ったというオモチャのようなネックレスをくれたが、

趣味でもないし、さすがにゲームセンターはないわーと思った。

それ以外にも色々限界だったが、きっかけはそれだった。

ああ、私はA男にとってゲームセンターくらいの価値しかないのか、と幻滅した。

別に物が欲しいわけではなかったが、完全にその場しのぎというか、

相手を想って用意したものじゃないよね、これ?感が嫌だった。

で、私から別れを告げた。


A男と付き合っている時に告白された同級生(B男としよう)がいて、

A男と別れてすぐに付き合い始めた。変わり身の速さたるや。

2年制の専門学校だったのだが、1年の終わりにやる舞台で、

まさかの彼氏彼女の役になって逆に気まずかった事を覚えている。

A男とB男は割と仲良くしていて、私がB男に乗り換えたのをA男に知られ、

勝手に話し合いをして和解したみたいな事もあったらしい。


B男とは専門学校を卒業しても付き合い続けた。

なんなら、今まで付き合った人の中で一番長い、3年ほど付き合った。

別れるきっかけになったのは意外なことだったが、それはまた書くとして。

専門学校のその後。


在学中、声優意外にも色々なオーディションがあり、いくつか受かったりもした。

その中で、ケーブルテレビで放送する、とある情報番組のリポーターをやれる事に。

顔出しというのもあり、私も知るチャンネルだったので、嬉々として受けた。

しかし同時にADの仕事もやることになり、それが過酷すぎてパンクし辞める事に。

テレビ業界の下っ端ってこんなに厳しいんだ、と知った。

まぁ家も遠かったし、慣れないAD業務+リポーターの原稿覚え+学校の課題、

とくればパンクするわ。ADの仕事、週5日だったしな。

現に、私の後任として入った同級生も、やっぱりADが辛くなって辞めた。

3人目はさすがに、学校側がAD業務をやらせるのを拒んだらしい。


卒業が間近になり、学校にきた事務所のオーディションを受けた。

私の世代はちょうど声優ブームが始まりかけた頃で、

先輩の代は卒業と同時に所属といった例もあったが、

私の代は倍率が高く事務所側も厳しく(もしくは私の代がダメだったか)

なかなか思うような結果が得られなかった。

良くて、事務所の養成所(専門学校とやることはさほど変わらない、多分)の

入所金0円、とかだった。レッスン費免除すらなかった。

専門学校に2年通い、また学校に通うのか…と、私は悶々としていた。

その頃、顔出し(舞台)にも興味が出始めていて、

声優事務所に入るか劇団に入るか、悩んでいた。


そんな折、当時専門学校の講師をしていた女性から、

その女性が所属している劇団の舞台にゲスト出演しないか、と誘われた。

以前にその劇団の舞台を観て感動していた私は、二つ返事でOKした。






その選択が、後に自分を尋常じゃなく苦しめる事になるとは知らずに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る