竪琴の精霊の語り

 テッドの祖母の名前は、クレアといった。

 彼女はとある森を代々守ってきた森番の家系に生まれた。そして精霊の依り代は、彼女の家に伝わる竪琴だ。それは、クレアの先祖が当時の統治者から与えられた森番の証だった。

 森番というのは森に住み、森の恵みで暮らしをたて、森に骨を埋める。そんな生活をしてきた一族の最後の生き残りがクレアだった。彼女の瑠璃色の瞳と白金の髪は朝日に輝く湖のようで、まだ若かった。

 彼女は街に住む同じ年頃の女たちとは少し違っていた。彼女を美しく見せていたのは自然と共に生き抜く強さだった。幼い頃に両親を病気で亡くした彼女は、一人で森を守っていた。麗しい顔をしながら、勇ましく弓を構え、狩りもした。その合間に畑を耕し、野菜や豆を植え、花を育てる暮らしは、その二の腕と脚をしなやかで強いものにしていた。

 森はクレアに守ってくれる礼として恵みを授けていた。貴重な茸がどこに生えているか彼女は知っていたし、幹を傷つけて甘い樹液を分けてもらうことを許されていた。ある木の樹皮が染料や薬になることも、クレアの助けになっていた。彼女は週に一度、近くの街に出向いて森で得た恵みを金銭に替える。そして、森では手に入らないものを買って帰るのだ。気丈でいながら、感謝を忘れぬ彼女は森に愛されていた。

 竪琴を響かせるクレアの姿は、神すら恋に落ちると評判だったが、実際には神ではなく精霊の火の王が恋に落ちるなど、誰も予想しなかった。


 ある夜、クレアが池のほとりにある森番小屋の脇で竪琴を弾いていた。

 月明かりに白く映る指が流れるように動き、伏した目には神々しいまでの美しさが漂っていた。竪琴の音色が闇に流れていく間は、ふくろうたちも鳴くのをやめて聴き入っている。

 その竪琴は作られてからもうすぐ百年がたとうとしていた。精霊はまだ目覚めていなかったものの、意識だけが竪琴に胎児のように宿っていた時期だった。まるで母親の感情が母胎に伝わるのと同じく、竪琴の周囲にある光景や音がまるで見聞きしているかのようになだれ込むのだった。

 異変が起きたのは、そのときだった。池の向こうに広がる森の一角から、一斉に梟たちが飛び去った。真っ黒い梢から離れる鳥の影に、クレアが思わず顔を上げた。


「なんだ?」


 訝しげに眉根を寄せた彼女は、ゆらりと何かが森の中から近づいて来るのを見つけて息を呑んだ。

 それは獣ではなかった。足をひきずるようにし、ゆっくりと池の向こう岸に現れたのは、一人の男だった。

 クレアは竪琴を置くと、腰に差した短剣の柄に手をやった。ただならぬ気配を彼から感じ、用心深く目を懲らす。この深い森をこんな夜中に、丸腰で出歩く者などいないのだ。

 向こう岸の男も、クレアを見つけたようだった。ふと、彼の唇が微かに動いた。その声はクレアに届かなかったが、竪琴には彼が「……あぁ、人間界だ」と呟いたのが聞こえた。

 そして男は膝をつき、そのまま頭から倒れ込んでしまった。

 それがテッドの祖父イグナスとクレアの出逢いだった。同時に、精霊の火の王が人間界に身をやつした夜でもあった。


 翌朝、イグナスは寝台で目覚めると、辺りを不思議そうに見回した。丸太を組み合わせて作った小屋の中は木の匂いで満ちている。窓の外はすっかり明るくなっていた。布団は柔らかく、暖炉には小さな火があった。


「起きたかい」


 紙巻き煙草をくゆらせるクレアが、目覚めた彼に声をかけた。


「どこか痛いところは?」


 男は黙って首を横に小さく振った。艶のある赤銅色の髪が珍しい。その目は燃えるような赤い瞳だったが、生気がなかった。


「名は?」


 クレアが紫煙を吐き出しながら短く問う。彼女はあまり人と接することがないせいか、少々男勝りで、ぶっきらぼうな物言いをすることがあった。


「……イグナス」


 男はそう答えると、珍しそうな目でクレアをじっと見つめていた。クレアも声が低いが、この男はもっと低くよく通る声だ。


「私はクレアだ」


 彼女は暖炉を目で指した。火の上に小さな鍋がかかっている。


「粥なら食べられる?」


「いや、私は……」


 男はしばらく戸惑っていた。だが、ふっと笑みを漏らす。


「……いや、ありがたくいただこう。この世界に身を置くと決めたのは私だ」


 その言葉の意味がわからず、クレアは眉を寄せた。


「その物言い、あんたは哲学者かい? あんな夜中に森をうろつくなんて、どうかしてるね」


 ちょっとした皮肉のこもった詮索に、彼は真面目な顔をして返事した。


「精霊の王だ」


 呆気にとられたクレアが、声を上げて笑う。


「面白い男だね。なかなか退屈させないじゃないか」


「冗談ではないぞ」


 男は気分を害したようだったが、クレアは相手にしなかった。暖炉に歩み寄って椀に粥を入れた。


「王様のお口に合うといいけど」


 男は恐る恐る口に粥を運んだ。一口、二口とゆっくりと味を確かめると、すぐに椀を空にした。クレアは目を細め、二杯目を差し出した。


「王様をイグナスと呼び捨てにしていいのかな?」


「構わないよ」


 男がいたって真面目に答えるのを、クレアは呆れて見ていた。新しい煙草を口にくわえたところで、イグナスが口の端をつり上げた。


「火が欲しいか?」


「え?」


 クレアがきょとんとすると、彼がこう囁いた。


「おいで。お前の王のもとへ」


 その刹那、クレアの目の前に小さな火の玉が浮かんだ。思わず唇から煙草を落として絶句するクレアに、彼はしてやったりという顔になった。


「これで信じてもらえるかな?」


 強ばった顔でクレアはイグナスを見つめていた。


「お前は一体、何者だ? ここへ何をしに来た?」


 精霊の王はふっと鼻で笑った。


「ここでなくてもよかったのだ。あの場所でなければ、どこでも」


 その赤い瞳が伏せられ、赤銅色のまつ毛が朝日に光っている。

 クレアはしばらく呆気にとられていたが、不意に椅子を寝台に寄せて腰を下ろし、こう言った。


「話してごらんよ。一人でためこむ辛さは、森で孤独な私がよく知っている。お前は辛いのだろう? 私は人と馴れ合わない。この森で一人、生きているうちにその術など忘れてしまった。だけど、お前は私と同じ匂いがするんだ」


 クレアは射るようにイグナスを見ていた。そこには同情があったかもしれない。けれど、確かに彼女は彼から自分と同じ孤独な湿った匂いを嗅ぎ取っていた。


 イグナスは頷くと、まず精霊と四つの世界について説明し始めた。そして自分は火の精霊を束ねる王だと言った。


「火の王は鍛冶を加護する。それだけに、私は人間に近い王かもしれない」


 そう彼は呟き、ふと竪琴を見た。


「あの竪琴には直に精霊が宿るだろう」


「精霊は、竪琴にも宿るものなのかい?」


 目を丸くしたクレアに、彼はふっと笑う。


「彼らは自然の精霊と違って『物憑きの精霊』と呼ばれる。齢百年を経るか、誰かの強い想いをこめられると生まれるが、根本的に私たちとは違う生き物だ。人間界に住むような精霊では力が弱いから見えないだろうが、王ともなればその姿は見える」


「じゃあ『物憑きの精霊』からは自然の精霊は見えないの?」


「まぁ、そうだね。彼らも王や帝王なら見えるだろうが」


「帝王? 王の他に、帝王までいるのか?」


「数多の王を束ねるのが六人の帝王だ。私も炎の女帝に従っている」


「へぇ。王様にも上がいるものなんだな」


 面白そうに目を細めるクレアに、彼は苦笑した。


「火の頂点に君臨する帝王は女性だが、とても気の強い方だ。炎のように高潔で激しく、ときには優しい。私が人間界に来たのも、炎の女帝の導きだ」


 そして、彼は小さなため息を落とした。


「この人間界には精霊や人間が住むが、王や帝王はその力の強さゆえに精霊界と冥界に隠れ住む。そして神がおわすとされる世界もある」


「へぇ」


 クレアがなかばガッカリした顔をする。


「知ってしまうと興ざめだな。私は森に神がいると感じることがあるけれど、そこにはいないということになるんだね」


「お前が感じたのは森の精霊だろう。人間は精霊を感じて神秘を見出し、神話を作ってきたから。知らないことが救いになることもあるよ。だが、無知はときに恐ろしい」


 そこで彼はふっと眉を寄せた。


「私がここに来たのは、いわば謹慎だ。四つの世界を行き来できる者は限られている。人間界を知らない王たちの中には、人間界はひどく野蛮なところだと信じている者もいる」


「失礼な」


「無知はそういう思考も招くものだ。私はいわば謹慎するために人間界に降り立ったのだ」


「謹慎ということは、イグナスは罪人なのか?」


 眉をしかめる彼女に、彼は囁くように言った。


「罪といえば罪なのか。過ちといえば過ちか。どのみち自分では止められなかったことだ。私は水の帝王の怒りをかったのだ」


「ふぅん。それで、いつまで人間界にいるんだい?」


 クレアが煙草をくわえながら問う。今度はイグナスが無言で炎を呼び出した。一瞬びくっとしたものの、彼女はそれで恐る恐る煙草に火をつけた。


「いつまでかはわからぬ。炎の女帝は『彼が落ちつくまで人間界に隠れていなさい』と、傀儡の道案内で私をここに送り出しただけだ」


「その水の帝王は、短気なのか?」


「いや、あまり物事に深く執着しない質ではあるし、滅多に怒ることもない方だから解らないな」


「お前は、そんな男をどうやって怒らせたんだ?」


 すっかり呆れ顔のクレアに、火の王は答えなかった。ただ、苦々しい顔をして微笑むだけだった。

 クレアが「しょうがないな」とため息まじりに言った。


「しばらくここにいるといい。人間の暮らしなんて王様にはわからないだろう? 拾ってしまった責任はとるよ」


「人間とは優しいものだな」


 その言葉を彼女が笑い飛ばす。


「まさか。私は優しくなどないさ。そうする相手すらいないんだから」


 そして唇をニッとつり上げる。


「お前がいると、火をつけるのが楽になるからね。それだけさ」


 こうして、精霊界を追われた王と、孤独しか知らない森番が共に過ごした時間が始まったのだった。


 クレアは彼に生活する術を教えた。森の恵みを分かち合い、共に街へ行き、人の生活の営みを見せた。

 イグナスはしばらく、ぎこちない笑顔しか見せなかったが、そのうち次第に打ち解けていった。

 クレアは風のような人だった。彼女といると、誰もが『あぁ、ありのままの自分でいいんだ』と思える。飾ることなく、それでいて凛としていた。

 ある日、森の中を歩きながら彼女はイグナスにこう言った。


「イグナス、一つ言っておく。私は木と水の生み出した森を愛している。だが、所詮は人間だ。少しの火は必要になる。けれど多すぎる火はここでは必要ない。もし、お前が暴力的な火を使うんだったら出て行くといい」


 クレアがそう言い出したのは、遠くの国での戦争の噂も頻繁に耳にするようになっていたせいだった。


「だけど、それで一番苦しいのはお前かもしれないね、イグナス」


 ふと漏らしたクレアの言葉に、ずっと押し黙っていたイグナスは目を見開いた。クレアは目を細め、どこか怯えたような彼を見ていた。


「火の王にも過ちがあると知って、どこかホッとしたよ。精霊も人も同じだな」


 そのとき、するっと王の頬を涙が伝った。だが、そのことに驚いていたのは他ならぬ彼自身だった。

 クレアがまるで母のように、そっと彼を抱きしめた。


「過ちを犯したなら、それを糧にするといい。たとえ恨まれても、憎まれても、お前は生きるんだ。森の中ではすべての命が懸命に生きている。お前も森で暮らして、それを感じてごらん。そうすればそんな顔をしなくて済むから」


 肩を震わせる彼の赤銅色の髪を、クレアは優しく撫でていた。

 クレアは強かった。彼女は自然の中で呼吸をし、命の厳しさと尊さを肌で感じていたのだ。

 だが、孤独は彼女を強くもしたし、脆くもした。クレアがイグナスを置いた本当の理由は、その脆さだった。

 人が恋しい。目が覚めたとき、誰かの顔があればいいのに。眠りにつくとき、誰かの寝息が聞こえたら安心するのに。そんな願望を彼女は常に抱えていたのだ。

 街の女たちが恋や美貌に焦がれるように、クレアが焦がれたものは温もりだった。彼らを結びつけたものは、寂しさだった。

 共に暮らすうち、彼らは心を寄せていった。最初はいたわりあうように、そして徐々に温もりを求め、ついにはどちらかが欠けることが怖くなった。


 満月の夜だった。クレアが眠れずに窓の外を見ていると、寝台でイグナスが目を覚ました。


「眠れないのか?」


 月明かりに響いた彼の声に、クレアが振り返る。それを見たイグナスは思わず見惚れてしまった。月光を背にした彼女は、精霊のように美しかった。

 元々美しい顔をしていた。けれど、今までの彼女をそうさせていたのは強さだった。今の彼女の美しさは女の愛情そのものによるものだ。すっかり柔和で慈悲深く、甘い顔を見せるようになっていた。何故なら、彼女はイグナスのことを想っていたからだ。

 床を軋ませ、彼女は静かにイグナスに歩み寄った。そして寝台に腰を下ろすと、彼の瞳を見つめた。


「お前はまだ寂しそうな目をしているんだな」


 眉を下げ、彼女は乾いた笑いを浮かべた。


「私はなんとなくわかっているよ。お前が求めているものはここにはない。何か……いや、誰か他の者を欲しいと願っているんだね?」


 イグナスは目をそらすこともなく、彼女を見つめていた。だが、すぐにふっと笑みを漏らす。


「かつてのことだ。今でも私がそんな目をしているとしたら、お前に触れたいからだ」


 吸い寄せられるように、二人の唇が重なった。

 そして彼女の体が寝台の中に誘われる。クレアは男と触れ合ったことはなかった。だが、不思議なもので本能がその術をきちんと知っていた。愛する者と触れ合うことが、最も想いを伝える術だと。

 一度触れ合ってしまえば、もう元には戻れない。二人は温もりを通して心を繋ぎ合わせていった。


 その夜を境に、イグナスは変わった。

 彼の背中には凜とした覚悟が滲むようになった。『ここで生きよう』と、彼は決めたのだ。

 人間界の食べ物を口にするということは、その世界に属し、老いの早さを受け入れるということだ。彼が最初、クレアの粥を躊躇ったのは、そういう訳だった。だが、彼はもう精霊界には戻れないかもしれないという想いから口にした。

 それが今では、森の恵みに感謝し、クレアの手料理を喜んで口にした。それは、彼が自らの意志で彼女とここで生きようと決めた証だった。

 クレアはそれを知らなかったが、イグナスの瞳の奥から誰かの影が消えていくのを感じ、安堵していた。


 だが、イグナスと一緒に酒を飲んでいたとき、彼女はこう漏らしたことがあった。


「ねぇ、私はお前を得て強くなった。けれど、弱くもなったね。お前を失う日が怖いよ。お前を一人にすることもね」


 街で手に入れた火酒を飲みながら、イグナスは笑う。


「人間とはもとから弱くて強く、強くて弱い、不思議な生き物だよ」


 彼女の目をじっと見つめ、イグナスは手を重ねた。


「人は世の理を知らないからこそ夢を見て、希望を抱く。精霊はすべてを知るかわりに、どこか諦めて何に対しても『こんなものだ』と悟ってしまう。だけど人間は無知ゆえに『もっと』と願う。お前はどれほど私に愛されているか知らないのだ。そして、そんな弱くて無知なお前が私に希望を教えてくれた。この暮らしが続けばいいのにと願うことなど、今までなかったのに」


 彼らは微笑みあい、そっと唇を重ねた。最初の頃のような激しく求め合うものではなく、どこまでも慈しむような優しい口づけだった。

 そんな想いが実ったのか、クレアは子を宿した。

 クレアの目から一切の恐れが消えた。子を守るためなら何もいとわない。そんな母としての想いが、彼女に違う強さを授けていた。

 自分がいなくなっても、イグナスにはこの子を残せる。その安堵も、彼女を強くした理由の一つだった。彼らは誕生を心から楽しみにしていた。


「名を決めておかないと」


 そう言ったイグナスに、クレアは笑う。


「もし男の子だったら、実は候補があるんだけどね」


「なんだい?」


「レイモンド。父の名前なんだ」


「いい名前だね。じゃあ、女の子だったら?」


「今度はイグナスが何か考えてよ」


「そうだな」


 彼は腕組みをして思案したが、すぐにふっと眉尻を下げた。


「クレアよりもいい名前が浮かばないよ」


「母と子で同じ名前だったら、混乱するよ」


「では、ミネルヴァはどうだろう?」


「お前の母の名かい?」


「いや、私をここに逃がしてくれた炎の女帝の名だよ。彼女のおかげでクレアに会えたんだ」


 ふっと、クレアの顔から笑みが消えた。


「イグナス、そろそろ話してくれないかい?」


「何をだい?」


 きょとんとする彼に、クレアははっきりとこう言った。


「お前の犯した過ちとは何だ?」


 イグナスは息を呑んだ。今までクレアはそのことを詮索することはなかったが、この日は様子が違い、みるみるうちに顔が曇っていく。


「お前がここに来てすぐの頃だ。夢にうなされたお前は寝言で『ドリス』という名を呼んでいた」


 顔から血の気が引いたイグナスを、クレアが苦悶に満ちた顔で見つめていた。


「ずっと忘れようと思っていた。だけど、そうしようとすればするほど、思い出すんだ」


 彼女が胸の底でもがき苦しんでいたことを、イグナスは初めて知った。優しく手をとり、そっと口づける。


「……すまなかった」


 優しい声が落ち、そして彼女の膨らんできた腹を撫でる。


「そうだな。話しておくべきだな。この子のことを考えると不安だろう?」


「いや、この子は関係ないんだ。ただ、知りたいんだよ。怖いんだ。お前を愛しているから」


 そう呟いたクレアの目から、涙の雫がこぼれ落ちた。イグナスが涙を指で優しく拭いながら、口を開いた。


「私は誰かを殺めたわけでもなく、盗みを働いたわけでもない。けれど、結局は彼女の心を殺し、彼のものを盗んだことになった。私は水の帝王の妻と通じたんだ」


 クレアが顔を強ばらせた。


「……最後まで聞いてくれるかい?」


 許しを請うようなイグナスの声に、彼女は黙って頷いた。


「水の精霊の頂点に立つ帝王は、人間があまりお好きではない。何故なら、この頃の人間たちの中には自然に対する感謝を忘れたものが増えているからだ」


「それはわかる気がするよ」


 己の利益を優先するあまり、木々をなぎ倒し、水を汚す者もいることを思い出し、クレアが渋い顔をした。


「だが、彼の妻である海の女王は人間を愛し、鍛冶を司る私を気に入っていた。人間たちは己の力量の限界を知らない故に物造りに無限の可能性を見る。だからこそ、懸命にいい物を作ろうとする。海の女王と私は、そんな人間が好きだった」

 

 そこでふっと息をつき、イグナスが俯く。


「ところが、ある日のことだ。彼女は私を呼び出すと、涙を流して抱きついてきた。彼女の夫は落ち着きのない男で、数々の浮き名を流していた。もちろん、妻を愛していないわけではない。ただ彼の心は水そのものに、流れを忘れて一カ所に留まると濁ってしまう。海の女王もそれは承知していた。だが、今度の相手は彼女の愛する妹だった」


 そして、彼は苦々しく言った。


「私は密かに彼女に好意を寄せていたが、帝王の妻と通じることはできないと、そう固く自分の心を閉ざしていた。ドリスはそれを知っていたんだ。だからこそ、寂しさを紛らわすために、私を選んだ。そして、私たちは一度だけの過ちを犯した」


 そこまで話すと、彼はクレアの額にそっと口づけをした。まるで許しを請うように。


「この腕に抱かれる彼女は、私を見ていなかった。私の中に夫を映していたんだ。それに気づいたとき、目の前の女がひどく哀れに見えた。同時に自分も愚かで、痛ましかったよ。私は身代わりと知っていながら彼女を抱いたんだから」


 きつく唇を噛むクレアの額に、彼はまた一つ口づけを落とした。

 

「このことはやがて水の帝王の知る所になった。ドリスはじっと耐えてきた妻だった。だが、初めての意趣返しの相手が私だということが、彼を憤怒させた。それで、炎の女帝は私を人間界に逃がしたのだ。しばらく騒ぎがおさまるまで隠れて居なさいとね。水の帝王は人間界に足を踏み入れることなど、まずないだろうから」


 そこまで言うと、彼はふっと自嘲するように唇をゆがめた。


「最初にお前は訊いたね。いつまで人間界にいるのかと」


 頷くクレアに、彼は眉を下げた。


「自分でもわからなかった。炎の女帝が傀儡を遣わさぬ限り、私は精霊界に戻れないんだから。だけど、今はむしろこのままでいたいと思っているよ」


 彼女の腹を愛おしそうに撫で、彼は赤い瞳でクレアを見つめた。


「ここで、ずっとお前といたいんだ。お前は美しい。ドリスとは違う。お前の生きる姿はしなやかで、気高い。なにより私を心から求めてくれた。それがどれだけ私の心を癒したか知らないだろうね」


 彼は祈るように目を閉じて囁く。


「どうか、一緒にいさせておくれ」


 クレアは黙っていたが、突然彼の鼻をつまんだ。

 慌てふためいた彼に、たまらずクレアが笑う。


「知らなかったよ。私も嫉妬することがあるなんて」


「すまない」


「証明しておくれ。そのドリスよりも私を選んだことを」


 強気な口調だが、その目にはすがるようなものがあった。

 イグナスは出来る限り優しく、彼女に口づけをした。そして、紅玉のあしらわれた耳飾りを片方だけ外し、クレアの左耳につける。


「お前は、私の妻だよ」


 クレアは瑠璃色の瞳を輝かせ、両手を差し伸べた。彼が応えるように彼女を抱きすくめる。


「我が生涯でただ一人の妻だ」


 竪琴は部屋の片隅で佇みながら、その様子を見守っていた。

 それまで森で孤独に過ごしていたクレアは、まさか自分が家族を持てるとは夢にも思っていなかった。だが、人と精霊という隔たりをなんなく越え、求め合う二人は出逢った。その巡り合わせを、竪琴はなんとも不思議なものだと感じたのだった。


 クレアが臨月にはいった頃だ。


「本当に一人で大丈夫?」


 クレアが心配そうに扉の前に立ち、街へ行くイグナスを見送るところだった。


「大丈夫。元はと言えば私のせいだからな」


 イグナスが申し訳なさそうに竪琴を抱えた。彼が戯れに竪琴を弾いたときに、うっかり弦を切ってしまったのだ。


「街に行って、張り替えてもらってくるだけだ。すぐ戻るよ」


「気をつけて」


 彼らは軽い口づけを交わし、手を振り合う。

 イグナスが竪琴を小脇に抱え、清々しい森の中を行く。木漏れ日から溢れる光が、彼の精悍な横顔と、右耳に光る夫婦の証を照らしている。


「お前に精霊が宿る日と、私の子が生まれるのはどちらが先だろうな」


 彼はふと、竪琴に向かって囁いた。


「お前はいい竪琴だ。作り手の熱意が伝わるよ。きっと、いい精霊を宿すだろうね」


 竪琴は『そう思うのならもう少し丁寧に弾いて欲しい』と思いながらも、誇らしくその言葉を聞いていた。

 そのときだった。

 不意にイグナスの足が止まり、彼の顔は一瞬にして強ばった。


「イグナス」


 どこからともなく凛とし、彼が咄嗟に膝をついて頭を垂れる。

 その直後、彼の目の前に炎の柱が立ち上がった。鮮烈な色をした炎だが、熱はなく地面が焦げることもなかった。火柱は次第に細くなり、人の形をとった。そこに現れたのは一人の女だ。炎を毛皮のようにまとい、悠然と跪くイグナスを見下ろしていた。


「ミネルヴァ様、お久しゅうございます」


 そう言ったイグナスの額には汗が滲んでいた。


「まったく、意識を飛ばすのがこんなに気持ちの悪いものだとは思わなかったぞ」


 彼女は切れ長の目を細めて、苦笑する。その髪は炎のように橙を帯びた赤をしていた。瞳は猫を思わせる金色で、筋肉のついた美しい肢体に炎が蛇のように絡まっている。

 彼女こそ、炎の女帝ミネルヴァだった。


「傀儡と共にいらっしゃれば、吐き気を催すこともないでしょうに」


 顔を上げたイグナスが苦笑する。女帝は体を精霊界に置いたまま、意識だけ飛ばしてきたようだった。


「ふむ。だが私の使い鳥は今、冥界に飛ばしているのでね」


「冥界へ?」


 イグナスの緊張した顔が、更に強ばった。


「冥界で何かあったのですか?」


「案ずるな。めでたい知らせを受けたので返事を出したまで。黄泉の帝王ダグラスが子を得るのだとか」


「では、タニア様がご懐妊に?」


 イグナスの顔に初めて、ほっとしたものが浮かんだ。つられるように女帝も微笑む。


「うむ。ところで、変わりはないか? あのときは湿った顔をしていたが、ずいぶんと晴れやかな顔つきだ」


 そう言うと、彼女はにやりと口の端をつり上げた。


「人間界は居心地がいいと見えるが、そろそろ戻ってもらわねばならないぞ」


 イグナスが息を呑む。


「それは、しかし……」


 彼は咄嗟に竪琴を握る手に力をこめていた。


「お前は傀儡を造る冥界の帝王と親友であろう? 彼とその妻のために贈り物を作って欲しいのだ」


 女帝が言うと、彼は苦しげに目を伏せた。


「ダグラス様のためにお祝いの品を用意できるのでしたら、これ以上の悦びはありません。しかし、私は人間界に留まりたいのです」


 女帝の美しい眉がさっと寄せられる。


「人間界に心残りでもできたか」


「はい。妻がおります。じき、子どもも生まれます」


 女帝が呆れ顔で天を仰いだ。


「イグナス、お前の恋心は燃え上がると厄介なものだ。まさに火の王だな」


「ミネルヴァ様、今度は私が自分の心に従って選んだ道でございます」


 彼の声は凛としていた。


「私の覚悟の炎は風に吹かれても水をかけられても消えませぬ」


「まったく、お前は頑なだ」


 するりと細い顎を撫でながら、女帝が唸った。


「お前がここに長くいれば、火の力が強く人間界に影響する。山火事や戦の知らせが増えているのも、お前のせいだ。かといって、お前の妻と子に王の資格がない限り、精霊界には連れてゆけぬ。宿した子が王の魂を持って生まれれば別だが、どちらにしても妻は置いていかなければならないぞ」


 ぐっと言葉に詰まる火の王を尻目に、彼女は腕を振り上げた。まるで袖が広がるように、炎が柱を作り出す。


「しばし時間を与えよう。だが、新しい王の誕生がない限り、火の王の定めからは逃げられぬぞ、イグナス」


 その声が止まぬうちに、火柱が一層高く燃え上がり、たちまち女帝の姿もろとも消えてしまった。

 残されたイグナスは唇を噛んでいた。そして街へは行かず、森番小屋へ踵を返していた。彼はただただ、一刻も早く妻を抱きしめたかった。


 それからほどなくして、クレアが破水した。


「クレア、しばらく辛抱してくれ」


 慌てふためいたイグナスが街から産婆を連れてこようとしたとき、一人の精霊が暖炉の中からのそりと顔を出した。皺だらけの浅黒い顔に、色のあせた唇、赤毛の縮れた髪。だが、その瞳は異様なほどギラギラと輝いていた。


「イグナス様、微力ながらお役に立てれば幸いです」


「お前はたき火の精霊ではないか」


「はい。代々、この家での出産を見守ってきました。我らの王の御子の誕生とあっては、じっとしていられませぬ。私が産婆をつとめましょう」


 そして、彼女はクレアの顔色を見て脈をとり、腹に手をあてた。


「それではお湯と清潔な布を用意しましょう。へその緒を切る小刀は消毒を。このクレアには私の姿は見えぬゆえ、王は私の言葉をお伝えくだされ」


 イグナスは強く頷き、妻の腰を必死に擦る。

 陣痛の感覚が次第に短くなっていったが、出産は長丁場となった。


「まだいきんではいけませんぞ。痛みを逃がすようにしてくだされ」


 クレアの悲鳴に似たうめき声が小屋に響く。それから数時間後、たき火の精霊が小さく頷いた。


「さぁ、やっと子宮口が開きましたな。これからはいきんでくだされ。ほれ、この箒の柄でも握って」


 それから、また長い時間がたった。イグナスは苦しみ悶える妻の姿に、すっかり焦燥していた。


「……出ましたぞ!」


 たき火の精霊の声に、イグナスは心を踊らせた。出てきたのは、男の子だ。だが、子どもは泣かなかった。たき火の精霊とイグナスは不安そうに顔を見合わせる。


「イグナス……赤ちゃんは?」


 クレアの弱々しい声に、彼が慌てて答えた。


「あぁ、男の子だよ」


 子を抱き上げ、母の胸に預けようとした瞬間だった。赤ん坊が堰を切ったように泣き出した。途端に炎が舞い上がり、クレアを呑み込んだ。


「クレア!」


 悲痛なイグナスの叫びと、クレアの悲鳴が響き渡る。


「これはいかん!」


 たき火の精霊が慌てふためく。火はあっという間に、彼女もろとも焦がした。


「王よ、お逃げくださ……」


 たき火の精霊は言い切らぬうちに炎に吸い込まれた。

 そのとき、女の声が木霊した。


「イグナス! 早く!」


 それは紛れもなく、竪琴の精霊の声だった。

 イグナスは火の中で赤ん坊を抱いたまま、目を見張っている。

 竪琴の精霊はクレアの姿をしていた。竪琴として齢百年を経る前に、クレアの最期の想いを受けて生まれてしまったのだ。


「……クレア」


 その言葉が漏れた途端、イグナスの目に光が戻った。

 彼は咄嗟にへその緒を切ると、傍にあった依り代の竪琴を掴む。外に飛び出した彼を、竪琴の精霊も慌てて追った。

 森番小屋はすぐ炎に呑み込まれた。轟々と黒い煙が舞い上がり、立ち尽くすイグナスを紅く染める。腕の中にいる赤ん坊の泣き声が家の燃える音に紛れて響いていた。


「何故だ」


 がくりと膝をつき、イグナスが頬を濡らす。怒号にも似た声が森を切り裂いた。


「何故、私は火の力など持って生まれたのか!」


 彼の子は火の力を受け継いでしまった。羊水から追い出された赤ん坊は、誕生とともに力を暴発させてしまった。たき火の精霊は、炎と同化して難を逃れた。だが、人間のクレアは助かるはずもなかった。

 イグナスは火の粉が舞い上がる小屋に向かい、何度も愛しい妻の名を叫んだ。赤ん坊の泣き声は止まない。


「イグナス」


 竪琴の精霊はたまらず、彼の肩に手を添えた。血走った目が、彼女を映した。


「お前はクレアの想いか。教えてくれ。彼女はどんな想いをお前に託した? 私を恨んでいたか?」


「そんな訳がないでしょう」


 精霊はとめどなく溢れる涙をそのままに、叱咤した。


「彼女は『生きろ』と、叫んでいました」


 イグナスが赤ん坊をわなわな震えながら見下ろす。やがて嗚咽が漏れ、体を震わせた。

 森が紅く染まる。クレアを燃やして、焦がしていく。それは何とも言えず非情な光景だった。

 そのとき、彼らの前に突然、真っ黒い闇が浮かんだ。丸く大きなその闇は、ぞっとするほど冷たい。


「イグナス、だから言ったのだ」


 闇から現れたのは、炎の女帝ミネルヴァだった。

 意識を飛ばしてきたときとは違い、このときは傀儡の鳥を連れていた。その鳥は全身が炎で出来ていて、長い冠羽と尾を持っている。足が鶴のように長く、そして炎に負けぬ緋色の爪だ。

 火の鳥の炎は寄り添う女帝を焦がすことなく、ただただ目映い光で闇を照らしている。女帝が傀儡の使い鳥と共に人間界に降りてきたのだ。


「お前の力は人間界に長く置くには強すぎる。そう言ったはずだぞ。哀れな男だ。お前の火は哀しい色をしている」


 呆然と立ち尽くしたままのイグナスに、女帝が歩み寄る。その手には籠を持っていた。

 女帝は彼の腕の中の赤ん坊を見つめた。


「その子の名は?」


「レイモンドでございます」


「ふむ。ならばレイモンドと最後の別れを」


「ミネルヴァ様!」


 すがるような声を上げた彼に、女帝は悲しそうに首を横に振った。


「残念だ、イグナス。彼は王の魂を持たない。そして、お前の居場所はこの人間界にはなくなった」


「ですが、この子は私の子です!」


「そうだ。だが、人間だ。人間は人間に紛れて暮らすのが一番だ」


 イグナスがうなだれた。

 竪琴の精霊は涙が止まらなかった。何故、こんなことになってしまったのか。今頃は生まれた赤ん坊を抱いて、親子三人で温かい一時を過ごしているはずだったのに。精霊の生まれたばかりの心が、千切れそうだった。


「ミネルヴァ様、ならば私をこの子のそばに」


 咄嗟に進み出た精霊に、女帝が眉を上げる。


「お前は、物憑きの精霊か」


「はい。イグナスの心が少しでも楽になるよう、この子のそばに私めを」


 目を見張る彼に、私は力強く頷いてみせた。


「大丈夫。私はクレアの想いを継いだ者よ」


 だが、イグナスはすぐに首を横に振る。


「駄目だ」


 反対されると思っていなかった精霊が驚いていると、彼が顔を歪ませて呟いた。


「お前の精霊としての寿命は短い。生まれた瞬間に死を見た者は、短命なんだ。鍛冶を司る私だからこそ、物憑きの精霊のお前の魂が弱々しいのが見える」


 精霊の胸に衝撃が走る。だが、すぐに彼の目を見つめ、静かにこう言い切った。


「構いません。この命はクレアがくれたもの。クレアだったら、この子を死んでも守るでしょう。だって、彼女はあなたと子どもに『生きろ』と叫んだ。心の中で、力強くあの森を生き抜いてきた自分たちのように、生きろと」


 彼は力なく項垂れ、籠に赤ん坊をそっと横たえた。

 イグナスが震える唇からこう漏らす。


「今だけ、クレアの代わりになってくれ」


 彼は精霊を抱きしめると、声を上げて泣いた。その様は、ひどく孤独で痛々しかった。

 女帝がため息を漏らし、燃え盛る森番小屋を見やる。


「多すぎる火は波乱と哀しみを残すものだ」


 愛し、愛された記憶が、こんなにも心を苦しめる。暖炉の中から二人を照らし、温もりを与えていた炎が、今はすべてを奪っていく。

 イグナスはどこかの世界に本当に神がいるのなら、問いかけたかった。……どうにもならなかったのか、と。


 イグナスは精霊に深い眠りにつくように加護を施した。加護とは精霊のまじないや術のことだが、王や帝王だけが使える力だ。

 彼は精霊の額に手を当てて、そっと囁く。いつもクレアに『おやすみ』と囁いていたときと同じ、優しい、どこか切ない声だった。


「お眠り。お前はすべての寿命と引き換えに、永久に眠り続ける。私の子孫の夢を見ながら、彼らを災いから守り続ける。目覚めるときはただの一度だけ。私の子孫がこの出来事を知ることが必要になったとき、お前はそれを語る。そのとき、お前は魂に還るだろう」


 深く沁み入るような声だった。精霊の瞼が重くなり、ついには閉じられる。

 そして、体が竪琴に吸い込まれていく。同時に、夢を見始めた。それは赤ん坊を取り巻く光景そのものだった。赤ん坊に届く音や声、そして感情が夢を通じて精霊の中になだれ込む。

 赤ん坊は今、泣いていた。言葉を知らず、ただただ母の温もりを欲して泣いていた。

 夢の中、精霊は一筋の涙を流した。『おやすみ、私の子。大事な大事な、森番の子』と優しく語ってみると、赤ん坊はいくらか安らいだようだった。

 籠の中の赤ん坊が泣き止んだ。女帝はふっと目を細め、イグナスに籠を持たせた。


 彼らは山を越えた先にある村で、赤ん坊を手放した。


 竪琴の精霊はそこまで語り終えると、テッドにこう言った。


「ここから先は、レイモンドが語るべき話だけど、セオドアはもう知っているわね。私はレイモンドだけではなく、お前もずっと夢の中から見守ってきましたよ。その面影にイグナスとクレアを見出しながら」


「僕の中に、二人の姿があるのですか?」


 そう訊ねたテッドに、精霊は頷いた。


「お前があの少女を見つめる目は、イグナスそのもの。お前が一人で生きながら、時折見せる孤独はクレアそのもの。もちろん、レイモンドとゾラもお前の中で生きている」


 そして、凛々しい瞳で彼を見据えた。


「精霊と、その精霊が愛した者の血族よ。お前の中に、彼らの想いが脈打っている。私にはそう見えるのです」

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