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手作り石けんのお話(錬金釜)

手作り石けん歴20年↑の加藤伊織です。
いやー、年齢バレますな。ハハハ。

最初はLU○Hの石けんを使ってたんですよね。
でも、扁桃腺炎をこじらせて入院することになった時、扁桃腺炎の入院記を書いてたHPの方が石けんを手作りしていて「作れるんだー!」って驚きまして。

座右の銘はDIYのこの私、作れそうなものは片っ端から作る人間です。
誕生日に親に道具一式を買って貰い、石けん作りを始めました。
道具一式と言っても、基本的にお菓子作りの道具と変わりません。互換性があるものが多かったし、元々写真をやっていたせいで薬品を扱うための道具(液温計とか撹拌棒とかメスカップとか)も持っていました。

この頃、手作り石けんブームだったんです。私が読んでハマったのは「お風呂の愉しみ」という本で、石けん作りの教科書と言うよりは読後感最高の美味しいエッセイでした。
何冊もレシピ本を買い、石けん作りの勉強を独学でし、石けんに香りを付けるために精油を扱うアロマテラピーの勉強もし、アロマテラピー検定1級と2級を同時に取り、更にはアロマテラピーアロバイザーなんてプロ資格まで突っ走り……。

更にこの先、アロマテラピーからリフレクソロジーとか漢方薬まで興味を広げてかじったりしましたが、それはまあ別の話。

一度だけ、「お風呂の愉しみ」の著者である前田京子さんの石けん講座も受けたことがあります。凄く勉強になりましたし、私は最初の20分必死に泡立て器を振るい続けていたのに、前田さんは抗議をしながらさらっと軽く混ぜていて衝撃的でした。

この石けんが、コールドプロセス(小説内では冷製法と書いています)という製法の石けんで、手作り石けんの主流になっている作り方です。

小説の中にも書いたように「油は熱したら?」「熱くなる」「ばかもーん、酸化する、じゃ!」です。肌にいい効果を持つオイルを、できるだけ余分な熱は掛けないようにしながら水酸化ナトリウム水溶液(苛性ソーダ水溶液)と混ぜ合わせ、時間を掛けて熟成させます。
このとき、保湿成分として有名なグリセリンが生成されますが、市販の石けんはこれを「塩析法」という方法で取り除いています。
グリセリンはそれだけでも有用なので、別のことに使っちゃうんですね。
コールドプロセスではこのグリセリンがそのまま石けんに残るので、保湿力の高い石けんができます。

基本的な話に戻るんですが、何故「故意に石けんにならない油を数%残した、グリセリンを含む石けんが肌にいいか」というと、石けんは弱アルカリ性であり、肌の表面が皮脂によって弱酸性なんですね。
つまり、石けんで体を洗った後、皮脂も流れてしまっているし、体表が弱アルカリ性になってしまっています。(ボディソープで弱酸性を謳ってるものは、ここに配慮があります。でも水分が多いと言うことは黴びやすいと言うことで、洗ったあとぬるっとする感触が残るのが、保存料の感触なんですよ……)

皮脂がないと言うことは、皮膚の水分が失われやすいと言うこと。
そこで、石けんに残っていた「数%の油」の出番です。これが皮膚の表面に薄い油脂膜を張ることで、保湿効果を発揮します。

そしてグリセリンがどのくらい保湿力があるかというと、お風呂に石けんを置いておくと空気中の水分を引き寄せて、石けんがとろっとしてしまうレベルです。
なので、石けんは必ず水気を切って、下に水が落ちないタイプの完全にお皿みたいなソープディッシュに載せて使っています。

作中、「マルセラ石けん」として書いている物は有名な「マルセイユ石けん」のことです。読み方によってマルセル石けんとも言います。
フランスのマルセイユで特産品だったオリーブオイルを使って作られていたのが名前の由来で、「72%のオリーブオイルと、28%の水のみ」を材料として作られていました。
高い品質を保持するためにおっそろしく細かい決まり事があり、それらを守らないと「マルセイユ石けん」とは認められなかったのです。
これが、時代が下るにつれ「72%の油脂と、28%の水」に変遷していきます。

現在マルセイユ石けんというと、オリーブオイル以外にココナツオイルやパームオイルが使われているのが一般的です。私が思うに、この組み合わせが一番シンプルかつ、泡立ち・泡もち・洗浄力などの機能性にバランスが取れていると思います(うちで作るときにはヒマシ油も入れます)。


……なんだか、何を書こうとしてたのかわからなくなってきたぞ?
錬金釜作中に出てくる石けんはそんなに普通の石けんと違うのか、ということを書きたかったんですよね。

違うんですよ。マジで、マジで。
市販のボディソープを使うと肌がかぶれるレベルのアトピーであるうちの子も、これは普通に使えます。
正直、「石けん作りやっててよかったー!」と一番思ったのがこの娘のアトピー問題でしたね。

オリーブオイル100%で作られていたのが、有名な「アレッポの石けん」なんですが、アレッポはシリアの都市であり、シリア内戦のために職人が散逸して今「アレッポの石けん」は入手が難しくなり、値段も上がっています。

ところが、自分で作ればオリーブオイル500mlと苛性ソーダ、合わせて1000円ちょっとで重さ約500g分の石けんが作れちゃうわけですよ。

作るでしょ。
作るでしょ。
苛性ソーダ危ないけど、薬品に慣れてる人なら怖い物ではないし。

手作り石けんの世界、奥が深いのです。
そしてやっぱり、何か肝心なことを書き忘れてる気がするけど、わからないのです……。

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