いつもお読み頂き、誠にありがとうございます。
るしあん様 西しまこ様、三毛猫みゃー様、鳥尾巻様、クロノヒョウ様、あるまんさん、矢口こんた様、桔梗 浬様、ふむふむ様、保紫 奏杜様、三流FLASH職人様、幸まる様、竹部 月子様、和泉将樹様、八万さん、獅子2の16乗様、八木崎さん、早乙女 又三郎様、火ノ鳥 飛鳥様、西之園上実様、豆ははこ様、大入 圭様、結音(Yuine)様、壱単位様、あまくに みか様、にわ冬莉様、ThinkingExperimenter様、しぎ様、蜂蜜ひみつ様、さらにスペシャル強制参加事後承諾ゲストとして、涼ちゃん、深川我無様。
皆様、色々といじってしまい、誠にすいません(五体投地)。
相変らず忙しくて、週一更新になってしまっております。もはや、少年ジャンプみたいなモノだと思って下さい(笑)。
ではでは、近況ノート限定短編、第3話「扉」、開演でございます、ぱちぱちぱちぱち。お楽しみ頂ければ幸いです( ;∀;)
「 Re: plan×××× ~未果てぬ嘘をついた君へ~」 第3話 ー扉ー
群青色、とりまいて
何色でもない君がいた
波の音で泣けて来て
僕は穏やかに願ってた
君の事を願ってた
Strange Backstory
「えーと、えーと、どうしょう?」
西しまこは身の回りの物を鞄に詰め込みながら、唸りつつも焦っていた。
「しまこさん、本は重いからやめた方が……」
「ええっ、でも紙がいいの。なんか読んでるって気がするし」
「はぁ、そうですけど……」
あれこれ悩むしまこのすぐ隣で、結音(Yuine)は荷造りが下手過ぎなその姿に呆れつつ、苦笑を浮かべながら手際よく手伝っていた。
「しまこさん、カービィは置いて行きましょう、カービィは!」
「ええええっ、可愛いから連れてく!」
「はぁ……」
結音(Yuine)は、断捨離についてしまこと強く話し合う必要があると思ったが我慢した。
現在、コミュニティ―「KAKEKOTOBA]は、引っ越しの準備で全居住者がてんやわんやの大騒ぎだった。その理由は今から半日前に遡る。
報告では全滅と言われていた物資調達班の半数が、コミュニティに奇跡の生還を果たしたからだ。
「み、皆様、よくぞご無事で……」
出迎えた豆ははこ達は、再会した和泉将樹、竹部 月子らを筆頭とする仲間の帰還に涙を流して喜んだ。
生還を果たした彼らは、見るからに屈強そうな部隊にしっかりと守られていた。るしあん、早乙女 又三郎、三毛猫みゃーを筆頭に、精鋭と呼べるその集団は《テントーレ》と名乗る私設軍隊だ。
「あなたが代表者様でしょうか?」
その私設軍隊の代表・蜂蜜ひみつが、再会を喜ぶ豆ははこに問いかけた。驚いた彼女はすぐに居住まいを正し、美しい所作で礼を述べる。
「はい、代表の豆ははこと申します。貴女様がこの軍隊の代表者様でしょうか? 先ずは深く御礼申し上げま……」
が、蜂蜜ひみつがその言葉を手で制し、言葉を遮った。
「不躾ながら挨拶は簡略化させて頂き、すぐにお話したい事があります。お時間を頂けますか?」
「は、はい? 大丈夫ですが……」
そのまま豆ははこ、深川我無、幸まるの中心メンバーは、蜂蜜ひみつが率いる《テントーレ》と緊急の会談を行った。それは驚くべき内容だった。
蜂蜜ひみつという女性は、世界最大手であるグローバル軍需産業《イエローハニー》を経営する一族の長女である。
《イエローハニー》は今回のバイオハザードの中でいち早く国と連携し、緊急で大都市に防衛網を張り、襲い来る獣人達を跳ね除け、殲滅せんと奮闘していた。
さらに精鋭特殊部隊を要し生き残った人類の救出活動も行っている。今回、コミュニティ―「KAKEKOTOBA」の存在を知り、《イエローハニー》が防衛する都市《ネオトーキョー》に迎え入れようと、彼女らはやって来たのだ。
その中で蜂蜜ひみつは、さらにこう語った。
「現在、狸型獣人、狐型獣人から進化した幾つかの亜種が発生しております。特にその中で危険視されているのは、《鬼化》した鬼狐の壱です。未確認ではありますが、何らかの超常の力を持つとされており、我々の軍隊をもってしても対抗する事が難しい存在です。そして恐ろしいのは、その鬼狐の壱の元に獣人達が集まり国家を形成する動きがある事です。既にセクション1~19まで彼らのテリトリーとなり、現在我々はセクション20で交戦中です。そしてこのセクション21まで攻めて来るのは時間の問題。急ぎ迂回して脱出し我々の防衛都市《ネオトーキョー》まで撤退する事をお勧め致します」
驚きの内容だった。
豆ははこは即決断し、急いでコミュニティ―内の全メンバーに伝達、明日の朝から移動作戦の実施と決まった。
三流FLASH職人博士はラボの中で椅子に背を預け、まどろみの中で懐かしい夢を見ていた。
それは今から十数年前、彼がまだ大学の研究員だった頃の話だ。
「えっと、待ち合わせはここでいいのか?」
大きな荷物を持ち旅装した彼が立つ場所は、米国のボストン。
数々の研究機関がライフイノベーションを起こそうと、互いを高めあうこの街。当時学生だった三流FLASH職人だが、彼の掲げた論文がとある最先端研究者の目にとまり、遥か海を越え客員として招かれた。
研究室に籠る彼には新鮮さと不安が入り混じる初の海外渡航、ただし、英会話は問題ないがコミュ力は別だ。いや壊滅的とも言えた。
異邦人として著しい疎外感を感じつつ、オレンジとグリーンの美しい色合いのバスに目を奪われ、ニューベリーストリートから待ち合わせのタッテ ベーカリー&カフェにどうにか辿り着いた時だった。
「君が三流FLASH職人くんだね?」
お洒落なオープンカフェで怯んでしまい、座る事も出来ず佇んでいると、急に肩をポンと叩かれ振り返る。そこには少し小柄で美しい女性が満面の笑みを浮かべ、ニカッとその顔を向けていた。
「私があまくに みかだ。先ず最初に言っておこう、これは重大かつ絶対であり拒否不可能な決定事項である」
今回彼に声をかけてくれた最先端研究者、あまくに みか。だが、唐突な彼女の言葉に、若き研究員である三流FLASH職人は、契約社会である米国の研究施設のシビアさを思い出した。ごくりと生唾を飲み込み、緊張したかすれ声で返事をした。
「は、はい!」
「うむ、では、最重要案件を告げさせてもらおう。いいかい、私の事は《みかりん》と呼んでくれ」
「はい?」
「《みかりん》だ。ふむ、では慣れ易いようにセリフを言ってみよう、『ねぇ、みかり~ん、ジャイアンがいじめるんだよぉ~』、はい、どうぞ!」
「……」
「何を黙っているんだ、ボストンまで来て、君はやる気がないのか、しっかりしろ!」
三流FLASH職人は、「どんなパワハラだ、こんちくしょう!」と心をの中で叫びつつ、死んだ魚の目で抵抗し、軽く殺意を覚えた。
ライフサイエンスやバイオテック分野で多くの研究者が参加するシェア型研究室「ラボ・セントエルモ」を開催する若き天才、マスターあまくに みか。州や企業から様々な資金援助を受け、成果としては十分過ぎるイノベーションをしまくり、既に国家的重要人物として政府からSPも派遣される程の人物だ。
「もう! 《みかりん》、《みかりん》だ!」
遂に子供みたいに駄々をこね始め、眼前に迫りくるマスターあまくに みか。
三流FLASH職人は呆れつつも、その美しい外見に思わず固まってしまった。さらに顔を突き上げ距離を詰めるあまくに みかに対し、どうにかぼそりと言葉を絞り出した。
「……やです、絶対、呼びません、あんた、馬鹿ですか?」
無愛想を地で生きる彼は、他のいいようがあるにも関わらず、ストレートに言い過ぎてしまう。さらに3歳しか違わないこの天才に、軽い嫉妬を覚えつつ、負けてなるものかと意気込む部分もあった。
「ふ~、どうも君は強情そうだね。だけど面白い。よし、痛み分けだな。まぁいい、さぁ、私のラボに行こう」
「あっ、はい」
案外すんなり引いたあまくに みかに拍子抜けしつつ、二人はラボに向かった。だが到着後、三流FLASH職人は唖然とした。
なぜなら、セキュリティロック解除のひとつである声紋認証、そこで何故か《みかりん》と呼ばないと入れないと言うトラップが彼を待ち受けていた。
「なんすか、これ! あんた、頭おかしいだろ!」
「ん? 私の優秀さは知っているだろう。見当違いの罵倒は自分の価値をさげるぞ。さぁ、それよりも早くしてくれ、他にする事が山ほどあるんだぞ、ほ~れ、ほれ」
「ぐぐぐぐぐ、ず、ずるいぞ……てめぇ!」
「なんだ、聞こえないぞ? やだなぁ、そんなに興奮して顔が赤いし。おいおい、セクハラはやめてくれよぉ、ふわぁはははは!」
「だ、誰が、セクハラだぁあああああ!」
5分後、三流FLASH職人は屈辱に屈した。
ただし、極度に憤慨していた彼はつい裏声で《みかりん》と言ってしまい、それが正規登録されたのだった。
以後、毎日仕方なく変なファルセットボイスで入出する彼を見て、他の研究員達は「あいつ、やばくない?」と半年は仲間内のパーティにも呼んでもらえなかった。
こうして若き三流FLASH職人は、師であるマスターあまくに みか、後の良友、火ノ鳥 飛鳥、保紫 奏杜、そして人工知能化する前のにわ冬莉と、この場所で出会う事となる。
「どうだ? 何か変化はあったか?」
ThinkingExperimenterは、軍事衛星《シリウス》の画像を監視するしぎに話しかけた。
「少し妙な動きがあるな」
「ん? どういう事だ?」
「見てくれ」
しぎが切り替えた映像は衛星画像を監視カメラと偵察用ドローンでリンクさせ、鮮明に解析処理された360度ビューが可能な中継映像だった。そこには夥しい数の獣人達の姿が映し出されていた。
「いつもの集会なんだろうが、かなりの獣人が集結しているんだ」
「確かに頭数がすごいな」
ThinkingExperimenterは「ヒュー」と軽く口笛を吹きながら、映像の分析にはぬかりない。
「……これはヤバいかもな」
しぎはそう語った彼の明晰な判断を待った。二人は政府非公認の特殊組織に所属していた。そこは軍需産業である《イエローハニー》と密接な繋がりもあり、現在は蜂蜜ひみつの指揮下に入っている。
ThinkingExperimenterとしぎ、その家系は遥か昔より国内の治安維持を影から引き受けて来た一族であり、宗家出身のThinkingExperimenterと、筆頭分家出身のしぎという立場だ。だが二人は宗家、分家を越えて仲がよく、さらに幼い頃より同年代である蜂蜜ひみつに仕えていた。
この二人が《イエローハニー》の防衛都市《ネオトーキョー》の軍事面、そのトップである。特殊家系に生まれたThinkingExperimenterは、異常な直感力を持つとも言われていた。
「しぎ、これは今までの集会とは違うな。都市の防衛をフェーズ7まで引き上げよう」
「なっ、いきなり最高レベルか?」
「ああ、下手すれば数日で攻め込んでくるかもしれない。全メンバー、民間人の非戦闘員も動員し、総力戦の準備に入るぞ」
「そこまでか!」
「ああ、間違いない。俺の勘がそう言っている」
そう断言したThinkingExperimenterは、少しだけ好戦的に微笑んだ。
「いいか、これは我々の生存権を広げるチャンスでもある。敵を一挙に殲滅する作戦を立案する。少なくとも陸戦兵器に関しては圧倒的にこちらが有利だ。思い切ってやるぞ」
嬉しそうに語る彼の姿。しぎは様々な特殊軍事作戦を成功させてきたThinkingExperimenterの手腕に全幅の信頼を寄せていた。
だが、最後に彼はこう付け加えた。
「……という建前だ。しぎ、わかってるな?」
「ああ、勿論だ」
二人は視線を交差すると、ニヤリと笑った。
眼前に集結した獣人達を眺め、鬼狐の壱は静かに微笑んだ。
その麗美な佇まいは周辺に集まる狐型獣人達からため息が出る程、あまりに美しかった。だが、ふと空気が動き、その長い銀髪がゆらりと揺れる。
「壱さま! 火急にてお知らせしたい事が!」
まるで忍者の如く瞬時に現れ、すぐ側で膝をつく存在。ついで焦りを帯びた声で迫るのは、壱の腹心である狐型獣人・桔梗 浬だった。
「には?」
艶やかな紅い瞳が、その零れる様な輝きの残像を残しながらゆっくりと振り返った。一瞬、「ほわぁ~」と見惚れてしまった桔梗 浬は、慌てて顔をふせ急ぎ語った。
「涼(すず)の部屋にこの様な置手紙が!」
伏したまま几帳面に折りたたまれた便箋を、恭しく差し出す桔梗 浬。少し頬が赤いのは内緒だ。
彼女は人間であった時から壱を知っている。いや、仲間だった。彼女達は政府が秘密裏に管理する《ムーンチャイルドプラン》。その管理私設《蒼穹》の出身だ。
《ムーンチャイルドプラン》とは、国内の特殊遺伝子を持つ少年少女を集めたものであり、一昔前のオカルトチックな怪しげな私設などではなく、暖かで穏やかな空間が子供達に与えられ、世俗に汚される事なく、伸び伸びと育てられていた。
壱は桔梗 浬が差し出した便箋をさらりと広げると、優雅な所作で目を通す。切れ長の瞳と物憂げな表情が月明かりに照らされ、銀色の光を帯びている。桔梗 浬は「なんか役得だぁ!」と心の中で小さくガッツポーズを作りつつ、静かに彼女の言葉を待った。
暫く後に、壱は「ふ~」とひと呼吸して、おもむろに告げた。
「かまわないっちゃ☆」
刹那、桔梗 浬は驚きの表情を浮かべ、心の中で「ラ、ラムちゃんだぁあああ!」と全力で叫んだ。さらに、つい小声で「と、尊い!」と漏らすと、即座に「はは~っ!」と五体投地までしてしまったのは仕方のない事だった。
特殊遺伝子の子供達、それは遥か太古、古代日本人のみが持つ遺伝子を受け継ぐ子供達だった。
「ここだ」
福山典雅は山間部に作られた施設、「コカコ展望台」の駐車場へと車を停めた。
美しい新緑に囲まれ、別天地の如く澄んだ空気が広がっていた。殺伐とした現在の世界とは隔絶された場所。同乗している大入 圭、矢口こんたの二人は「「ほえ~」」と思わず感嘆の声をあげた。
3人は車から降り展望台の入り口に向かった。その背後からふいに声がする。
「……典雅? 典雅なのか?」
振り返った福山の眼前には、畑仕事をしていたのか、麦わら帽子を被る男が立っていた。
「八万さん!」
「やっぱり典雅か!」
思わず肩を抱き合い再会を歓喜する二人。その様子に驚いく圭が少し間を開けてから恐る恐る尋ねた。
「……あの、典雅さん、こちらは?」
「ああ、紹介がまだだったな。こちらは八万さん、あーと、驚くなよ、世界の黒幕の一人だ」
「「へっ?」」
聞き間違いかと思えるその言葉に、圭とこんたが呆気にとられるが、福山はなんでもない様子で続けた。
「《イレブンフェィセズ》って聞いた事あるか? 八万さんはその一人なんだ」
「「へっ?」」
一瞬の間と同時に二人は目の前の麦わら帽子の男性をまじまじと見つめ叫んだ。
「「え、え、えええええええええええええええええっ!」」
気軽に言う福山だったが、その名前は国家機密を越えるタブーである。二人は腰が抜けそうなほど驚き、同時に呻く様な奇声を漏らした。
圭は外務省時代、こんたはハッキングにて、二人は世界のタブーである《イレブンフェィセズ》という名前だけは知っている。
一般人はまず知る事がないその名前。古より秘密裏に世界の意志決定を行うという11人の存在。
その甚大なる影響力の一端として、世界的に有名なスポーツ《サッカー》がある。その本当の起源はこの11人を讃え、手を汚さず世界を変えると言う意味で生み出されたスポーツというのは、その筋では有名な話だ。
信じられないという表情を浮かべる圭とこんた。だが次の瞬間、二人は異様な殺気を感じ背筋がぞくりとした。いくら素人でも無視出来ない程の強烈な殺意。
吹き出す汗のままに、二人は慌てて周囲を見渡す。そして気がついた。この展望台の至る場所に異様なレベルでセキュリティシステムが擬態して存在し、わざと影だけを見せた複数の人間の存在を。
二人は本能的な恐怖に襲われ、全身にじっとりと冷たい汗をかいた。そして悟った。彼らはいつでもこちらを殺せる立場であるという事だ。
同時にこの目の前の男はまごう事なき《イレブンフェィセズ》であり、これは冗談でも何でもない死地に自分らがいるという事実を理解した。
穏やかな微笑を浮かべる八万。3人は彼に案内されるままに、コカコ展望台の中へと入っていった。
第4話、近日公開 to be continued
With gratitude to many friends