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から袖の弥平という人物像

人間一度ケチがつくととことん
落ちるところまで落ちることがある。
彼も普通に小倉藩に仕えていたのであろうが、
明治維新後は妻子にも逃げられ、
身を持ち崩して最下層の身分にまで零落する。

九州人は名誉を重んじる風潮が強かったので
この人物は恐らく死ぬ場所を欲しかったのだろうが
そこで安易に士族反乱に加わるという選択をせず
惚れた女のために死ぬという結論は書いている
私自身から見ても無理のある設定だったかもしれない。

それでも人の死に様は生き様そのものだと言われているし
彼は格好つけて死にたかったんだと思う。
私は彼と全く異なる立場であるけれど
彼は私の理想の投影でもあり、
毎日死ぬ日を唯一の喜びと思いながらも
理由をつけて生き長らえている自分と重ね合わせている。

恥の多い人生だというのは太宰治であるが、
全く同感で、家族がいなければ簡単に
命を粗末にするんだろうなと考えている。
世間の鏡に映る自分の内面の醜悪さに
吐き気がするのに、生意気にも傍目には幸せそうに
生きている私は、自分の代わりに弥平を殺したのかもしれない。

彼の犠牲のおかげで私は今日も生きている。

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