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【セフ甘】改稿前の3話


お久し振りです、青野です。
12月からのカクコンにセフ甘を出すことにしたんですが、序盤に改稿出来る部分を見つけたのでサクッと直しました(笑)
特に3話はほぼ別物と言って良いレベルで直すことになったんです。
直したとはいえ、せっかく書いた文章……そのまま無くすの惜しいと思い、旧3話をこちらで閲覧出来るように転載しました!

改稿後との違いを楽しんで頂ければ幸いです。
本編の方はまだ掛かります、ごめんなさい!

そんな訳で、カクコンでもセフ甘をよろしくお願い致します。
以降は旧3話となります!
ではでは~。

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 翌日の昼休み。
 今日は智則《とものり》が学食、尚也《なおや》が彼女と食べるということで一人で食べることになった。
 セフレ以前に星夏《せな》とは友達ではあるが、噂がついて回る自分に関わって俺の評判を落としたくないと言われている。
 周囲の評価なんぞ気にしてないが好きな子たっての願いを断れるはずもなく、基本的に俺達は学校ではクラスメイト以上の関わりを持っていない。

 そんな理由から星夏とも一緒に食べることが出来ないので、適当に屋上で食べることにした。
 五月の快晴が眩しい中、広い屋上のどこに座ろうか考えていると……。

「咲里之《さりの》先輩! 俺と付き合って下さい!」

 めちゃくちゃ知ってる名前の人に告白する男子の声が聞こえた。

 おいおい、昨日の放課後に海森と別れたばっかなのにもう告白されてんのかよ……。
 どっから破局を聞きつけたのか不明だが、それにしたって行動が早過ぎるだろ。
 前から機を伺ってたとして思えないなこれ。

 それだけ善悪問わず星夏が注目を集めている証拠なんだろうが、好きな子が他の男に告白される現場に立ち会ってしまうなんて、タイミングの悪い自分に呆れるしかない。
 まぁ、日和って告白出来ない俺と比べたらその勇気だけは讃えるべきなんだろうな。

 そう考えながらも、邪魔にならないように踊り場に隠れ、密かに聞き耳を立てて星夏の返答を待つ。
 告白した男子がどんなヤツかは解らないが、彼女が望む人間性の持ち主であることを祈るしか無い。

 しばしの静寂が過ぎてから出された星夏の答えは……。






「ごめん。パスで」
「えっ!?」

 ……どうやらお眼鏡に適わなかったらしい。
 自分の告白に自信があったのか、顔も名前も知らぬ男子はフラれた事実に酷く驚愕したようだ。
 
「えっと、一年B組の間瀬君だったっけ。悪いけど告白は受けられないや」
「な、なんで?! 咲里之さんって今誰とも付き合ってないんでしょ!?」
「そだけど、タイミングがあからさま過ぎてねぇ~大体さっきから胸とか見過ぎだよ?」
「うっ……」

 呆れた口調で断り文句を口にする星夏に、告白男子は図星を衝かれたために言葉を詰まらせる。
 流石に告白する時に目を合わさず胸を見るのはダメだわなぁ。
 星夏で童貞を捨てようと考えて告白したってわけか。
 
 これは俺が女でも確かに無理だ。
 同性から見ても『ナシ寄りのナシ』の判定が出るようじゃ、星夏も断って当然だな。

「き、聞いてた話と違う……咲里之先輩は誰とでも付き合うって……」
「はぁ~……」

 断られたことがよっぽどショックだったのか、男子は狼狽しながらそう呟いた。
  
 それを聞いた星夏は盛大にため息をつく。
 ……正直俺も全く同じ気持ちだ。

 なんで噂を鵜呑みにした癖に騙されたみたいな反応するんだよ。
 しかも当人の前でなんて失礼にも程がある。 

「……あのさ。噂を聞いて来たとは思ってたけど、いくら何でも人を舐め過ぎじゃない?」
「え?」
「そりゃ噂が出るような態度を取ってる自覚はあるけどさ、よく確かめもせずに告白されたら誰でもオーケーするって決め付けるなんて、アタシを都合の良い人形かなんかと思ってるの?」
「ち、違う! 俺はそんなつもりは……」

 怒りを隠さない強い口調で話す星夏に、男子は狼狽えながらも否定を口にする。
 
「言っとくけどアタシがキミを振ったのは顔じゃ無いから。流石に身嗜みがなってなかったり不潔なのは断るけど、少なくともイケメンかどうかは関係ないよ」
「え、じゃ、じゃあどういう……?」
「どう知ったのかは聞かないけど、アタシが海森と別れたから告白してるよね。その時点でデリカシーがないのが丸分かりなんだよね」
「で、デリカシー?」

 星夏が告白を断った理由に、男子は訳が分からないという風に返す。
 本気で思い当たらないようだ。
 俺でさえ解ったというのに……と言っても星夏の受け売りだから解ったんだが。

「彼氏と別れたってことはアタシは失恋してるわけ。そんな傷心の時に顔も名前も知らない男子に告白される。つまり弱ってる時を見計らったワンチャン狙い……ぶっちゃけると卑怯ってわけ」
「ひ、卑怯っ!?」

 自分の告白を思いもよらない言葉に形容されて、男子は愕然とした声を上げる。
 
 でもそうなんだよなぁ……星夏がまだ海森と付き合ってるならまだしも、別れてからの告白って、言ってしまえば邪魔者が居なくなってからの漁夫の利狙いにしか見えないんだよ。
 しかも相手は破局したばかり……要は傷付いてるのに、自分の気持ちを押し付けた形になるので星夏の気持ちを無視しているから、告白だけでデリカシーが無いと露呈したわけだ。
 これでは彼女の言う通り卑怯としか言い様がない。
 恋愛は相思相愛を信条とする星夏の地雷を、最初の一歩から踏み抜いてしまっている。
 
 ビッチ=誰でも良いなんて単純な図式が成り立ってると思い違いしたのが、そもそもの失敗だったな。

「ひひ、卑怯なんて心外だ! 俺は真剣に告白して──」
「『真剣』って言うのは言葉じゃ無くて態度で示すって簡単な事も分かんないの? わざわざ口に出してる時点で、努力もせず楽したいって言ってるようなモノなんだけど?」
「あ、うっ……」

 言外に『だから卑怯なのだ』と告げられ、男子は気まずそうに言葉を詰まらせる。
 まさか告白一つでここまで言われるとは思わなかったんだろう。
 せめてある程度の交流があればもう少し希望はあったかもしれないが、初対面で告白しても逆効果でしかない。

「誰と付き合うか選ぶ権利はアタシにだってある。そういうわけだからキミとは恋人になりたくない。話はこれでおしまいね」
「……」

 星夏が話を切り上げても、男子は何も返さずに黙り込んだままだった。
 その沈黙から続く光景を予想した俺は、小さく息を吐きながらも足を進める。
 
「び、ビッチの癖にモテるからって調子に乗りやが──」
「さっきからうっせぇなぁーー! フラれた癖にネチネチ鬱陶しいんだよ! 屋上で飯を食おうとしてんのに昼休みが終わっちまうだろうがぁっ!」
「ひぃっ!?」
「っ! こ、こーた?」

 案の定逆ギレして星夏に掴み掛かろうとした男子に向けて、これ見よがしに大きな怒声を放つ。
 俺という思わぬ部外者の登場に、男子は一気に顔を青褪めてビビり出す。
 
「ご、ごめんなさいーー!」

 二の句を告げる前に、お化けに遭遇したかの如く男子が我先にと屋上から逃げ出した。
 危機的状況において女の子を放り出して逃走とか……女子一人ならどうにでも出来るってどんだけ星夏を舐めてたんだか……。
 まぁもういないヤツのことなんてどうでもいい。

 そう思って改めて星夏に顔を向けると……。
 
 

「──っぷ、あっははははははははっっ!! さっすが《《元不良》》! ガンの飛ばし方が違和感無くてウケる!!」
「……助けてもらった第一声にしては随分と失礼だな、オイ」

 危うく襲われそうになったというのに、腹を抱えて大爆笑してやがった。
 心配して損した……いや、これ心配を掛けたことを気にしてはぐらかそうとしてんな。
 俺が勝手にやったことだから、別に気にする必要なんて無いのに……。

 まぁ、口に出して気遣いを無下にしたら余計に拗れそうだし、黙っておくか。

「はははは……はぁ~……フラれた腹いせに襲うヤツとか、絶対にお断りだっての」
「向こうからしたら『勇気を出して告白したのにめちゃくちゃ酷評された』って思ったんだろうよ」
「ロジハラってやつ? あんなデリカシーナシが相手だと、アタシじゃなくても同じ結果だったと思うよ。初対面で美少女にコクってカップル成立! ……なんて都合の良いことあるわけないじゃん? あ~ダメ。余計に腹が立ってきた」

 本気でない一方的な気持ちの押し付けによっぽどお怒りらしい。
 星夏の場合、嫌いな相手にはとことん毒舌が出るところがあるから、物言いがキツくなるのはある意味避けられなかったんだろうなぁ。
 
「それで? こーたはなんで屋上に来たの?」
「今日は一人で食べることになってな。なんとなくで来たら……アレだ」
「まぁ聞かれてなかったらあんなタイミング良く助けられないよね。あ、助けてくれてありがと」
「どーいたしまして」

 取って付けられた感謝の言葉に軽く返す。
 しかし、たまたま助けられて本当に良かった。
 違う場所に行ってたら星夏が傷付いてただろう。
 もしそうなったら、あの男子は確実に半殺しにしてたな。

 結果的にだが三者三様で運が良かったようだ。
 
 そういえば今って二人きりなんだよなぁ……。
 基本的に屋上は人が来ないし……試しにアレを言ってみるか。

「……なぁ星夏。他に誰も居ないし、たまには一緒に昼飯を食べるか?」
「え?」

 俺の言葉が予想外だったようで、星夏はキョトンとした様子で聞き返して来た。
 ヤバい、流石に露骨過ぎたか……?
 らしくない誘いをした緊張と羞恥が今になって全身を駆け巡って、何だか居心地が悪い。
 
 やっぱり無かったことにしようと口を開こうとして……。

「うんいいよ。たまには悪くないね」

 まるで動揺した素振りを見せずに星夏が誘いに乗ってくれた。 

「……おう」

 さっきまでの緊張が嘘の様に消え去り、心に残ったやるせなさを抱えたまま、俺は一言発するのだった。

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